2024年4月に米子空港で発生した全日本空輸(ANA)機の重大インシデントについて、国の運輸安全委員会は27日、調査報告書を公表した。着陸しようとした機体が湖面から約77~88メートルまで接近し、対地接近警報装置(GPWS)が作動して緊急の回避操作が行われていた。
滑走路を目視できないまま降下
報告書によると、2024年4月7日午後9時半ごろ、羽田発米子行きのANA389便(乗員・乗客138人)が着陸しようと右旋回しながら降下した際、湖の水面から高さ約77~88メートルまで接近。GPWSが作動して警報を出し、ゴーアラウンド(着陸やり直し)した。機体はグループ会社のANAウイングスが運航していた。
この事案の直前にも副操縦士の操縦で着陸しようとしていたが、うまくいかずゴーアラウンドしていた。このとき、機長は自動操縦ではなく、副操縦士の練習のためマニュアルで操縦するよう指示している。
機長と副操縦士の状態
2回目の着陸に向けた進入は機長が操縦していた。機長は、通常の経路ではなくショートカットする形で旋回し、飛ぶ方向や姿勢を補助する機器も使っていなかった。滑走路が見えるかどうか隣の副操縦士に何度も尋ねたが、副操縦士は「見えない」と答えていた。通常より降下を始めるタイミングが早く、副操縦士が「早い」と機長に伝えた直後にGPWSが作動した。
社内規程では、安全のため、視界が悪いなかでの着陸時には自動操縦を使うことを推奨している。降下するため周回しながら進入する際は、目視で滑走路や灯火を視認して、滑走路と機体の位置関係を確実に把握するように定めている。
報告書が指摘した原因と課題
報告書は、機長が連続勤務の4日目であり、体調不良などから「業務を実施するうえで必要な身体的能力に支障を来していた可能性がある」と指摘。副操縦士も約1カ月ぶりの飛行で、事案直前の着陸がうまくいかなかったことを気に掛けたことなどから混乱していた。
こうした状況から、機長らが「規程で定めた手順や基準を順守せず、滑走路を視認できないにもかかわらず降下を継続」したことで水面に接近したと指摘した。
事案は発生した日のうちに本社に報告されたが、同社は操縦席のボイスレコーダー(CVR)の記録を取り出さないまま翌日も飛行したため、発生時の記録は保存されていなかった。重大インシデントとして扱われるまでに12日間かかっており、「事故等の発生が疑われる場合は、次に飛行を行う前に必ずCVRを機体から下ろすといった処置が重要」と指摘した。



