中国共産党中央党校の元教授で、約40年にわたり党の幹部育成に携わってきた蔡霞氏が、習近平国家主席を「マフィアのボス」と批判し、その正体が「ハリボテ」であると暴いた。党籍剥奪などの代償を払いながらも、彼女は命がけで真実を発信している。
「最強」なのに何かを恐れている
毛沢東以来といわれる権力集中を実現したはずの中国国家主席が、なぜ数十年来の幼なじみである側近まで粛清し、猜疑を年々深めているのか。その答えを、中国共産党の中枢に身を置きながら習批判へと転じた一人の女性学者が、命がけで発信している。
習近平は、中国共産党の総書記・国家主席・中央軍事委員会主席の三職を兼ね、任期制限を撤廃し、軍の最高指揮権を掌握し、長老の影響力を封じ、競合するあらゆる権力ネットワークを解体してきた。これほどの権力集中は、毛沢東以来である。
40年、幹部人材を育ててきた元教授の乱
蔡霞氏は1956年生まれの女性学者で、中国共産党中央党校の元教授だ。中央党校は党の幹部人材を育成する最高学府であり、習近平も2007~2012年に校長を兼任していた。約40年にわたってこの機関に身を置いた蔡氏は、いわば「体制の内側で体制を支えてきた人間」だった。
その蔡氏が2020年、私的な会合の場で、習を「マフィアのボス」、中国共産党を「政治的ゾンビ」と呼び、「習近平を解任することが党再生の第一歩だ」と語った。その音声がインターネットに流出し、拡散された。中国共産党は蔡氏に対し、その発言が本人のものかどうかを照会した。蔡氏は「自分のものだ」と認めた。
変質してしまった共産党への絶望
その代償は大きかった。党籍の剥奪、年金を含む退職後の待遇の取り消し、そして帰国すれば拘束される可能性――。だが蔡氏は、それを承知のうえで、腹をくくってすべてを認めたのである。
習の保身行動は年を追うごとに強まっている。曲がりなりにも機能してきた軍の指揮系統を空洞化させ、デジタル監視網を全土に張り巡らせて、いっさいの批判を封じる。近年は自分が信頼して任に付けたはずの人物を次々と粛清しており、粛正が日常業務のようになっている。これらの異常行動は、習の権力が実は盤石ではないこと、あるいは習自身がそれを盤石ではないと感じていることの証左である。



