オフィスに個人用のロッカーがなく、従業員が各自のデスク下などに私物を収納している職場は少なくない。そんな中、従業員から「キャビネットを置けるボックスなどを用意してほしい」という要望が上がることがある。会社が用意すべき備品と、個人が用意すべき備品の線引きはどこにあるのか。社会保険労務士の佐藤敦規氏に聞いた。
会社と個人の備品の線引きはどこ?
まず前提として、会社が用意すべき備品の範囲を定めた法律はない。その上で一般的に考えれば、業務で使う備品は会社が用意すべきだ。業務に必要なものを個人が負担するという状態には、違和感がある。判断の軸は「業務に必要かどうか」に置くのが妥当だろう。
一方、個人の好みで追加するアイテムは、本人が用意するものと整理できる。書き味にこだわった筆記用具や、使い慣れたメモ帳などがこれに該当する。一般的なデスクワークであれば、手指の乾燥を防ぐハンドクリームのような、業務そのものには必要のないものも同様だ。
キャビネット設置の判断ポイント
今回のキャビネットを置くボックスは、業務に不都合とまではいえないものである。ただ、床に置いたキャビネットが通路を塞いでいる、デスク周辺の整理に支障が出ているといった情報があれば、快適性だけの問題ではなくなる。業務や職場環境への影響を確認した上で判断するとよいだろう。
実務では、会社が用意する予定の備品であっても、稟議や承認に時間がかかり、社員が自分で買ってしまうこともある。法律上の問題とは別に、業務に必要なものが適切な時期に用意されない状態が続いているのであれば、購入の手続きそのものを見直したほうがよいだろう。
従業員負担のルール化を
なお「業務に必要な文房具まで自費で購入するよう求められている」と相談されることもあるが、これも直ちに法律違反とまではいえない。労働基準法では労働環境を整える義務が細かく定められているわけではないため、そのことを外部に相談しても、法的な解決には結び付きにくいのが実情だ。ただし、社員に継続的な費用負担を求めるのであれば、対象や負担の方法を社内のルールとして明確にしておく必要がある。
備品を巡る要望に、一律の正解はない。「業務に必要なものは会社が用意する」という原則を置いた上で、どこまでを快適さのための希望と捉えるかを、会社ごとに整理しておく。その基準を社内で共有しておけば、要望が出るたびに判断がぶれることも少なくなる。



