武雄市北方町の読み聞かせ団体「すくらむ」が、地域に残る戦争の記憶を継承するため、戦争体験者に取材するなどして制作した紙芝居「生きとうよー~北方列車襲撃」の上演を続けている。戦後81年となる中、代表の村上博美さん(68)は「自分も戦争を知らない世代だが、体験者たちの思いを伝えていきたい」と話している。
佐賀市の研修会で披露
「あっ、空襲だ。逃げんば!(逃げなきゃ)」7月下旬、佐賀市内で開かれた県地域婦人連絡協議会の研修会。すくらむのメンバーが登壇し、約50人を前に紙芝居を披露した。絵をスクリーンに映し、効果音も交えて語られる内容に、参加者は引き込まれていた。協議会の担当者は「臨場感にあふれ、どの世代が見ても戦争の悲惨さが伝わりそうだ」と話した。
制作のきっかけと題材
すくらむは1993年、武雄市立北方小PTAの母親らが結成し、現在のメンバーは8人。絵本の読み聞かせのほか、地域の歴史を題材にした紙芝居を制作してきた。「生きとうよー」は、メンバーが知り合いから地元でも戦争被害があったと聞いたことをきっかけに、2022年頃から制作を始めた。
題材にしたのは、1945年8月7日に武雄市北方町で起きた米軍の戦闘機による佐世保線の列車への襲撃。北方町史によると、この襲撃で死傷者も出たという。
主人公の証言とメッセージ
主人公は旧制武雄高等女学校(現・武雄高)の3年生だった鍵山佐智子さん。学校帰りに校門で教頭から叱られ、列車に乗り遅れたが、もともと乗ろうとしていた列車が襲撃された。心配して北方駅に迎えに来た母親に向かって叫んだ「生きとうよー」という言葉をタイトルにした。
列車襲撃の記録はほとんど見つからなかったため、村上さんらは、鍵山さんや戦時中を知る住民から証言を集めたほか、武雄高等女学校の跡地を訪れるなどした。
絵は村上さんが担当。鍵山さんらの証言をもとに、空襲警報が鳴って学校近くの防空壕に隠れた鍵山さんらの姿や、襲撃後に負傷した人らが横たわっていた北方駅の様子を水彩画で表現した。紙芝居の中には、「目の前の子供達に平和な世を残してあげたい」という鍵山さん直筆のメッセージも組み込んだ。
完成と今後の上演
2023年3月に完成した紙芝居を見た鍵山さんは「あなたたちがいて良かった。ありがとう」と話したという。紙芝居はこれまでに10回以上、町内の小中学校や老人会などで披露した。村上さんは「生きとうよー」の制作に携わるまで戦争への関心は薄かったが、鍵山さんに話を聞いて「戦争をしてはいけないと強く思った」と語る。すくらむは今後も上演を継続していくつもりだ。



