輪島市町野町地域では、2024年3月に仮設住宅の入居が始まり、同年5月には一部復旧困難地区を除いて断水が解消した。復旧が進む中、9月に豪雨災害が発生。地区付近を流れる町野川が氾濫し、土砂崩れも起きた。民生委員を務める坂本敏展さん(72)は「これから再建に向かう中でたたき落とされた」と振り返る。
豪雨災害で区長を兼任
豪雨災害の影響は自治会にも及んだ。若桑地区の区長は農業用ハウスが浸水被害を受け、専業農家のため排水処理などに追われ、「(区長を)ほかの人に代わってもらえないか」と懇願された。二重被災からの再起を目指す同地区では区長の責任も大きく、坂本さんが若桑地区の区長を引き受け、2025年1月から当分の間、民生委員と兼務することになった。
衛生問題と避難所でのつながり
坂本さんは被災時の衛生問題を強く訴える。見守りで回った避難所では、断水でトイレの水が流せず、不衛生な環境を強いられた。避難所ではインフルエンザなどの感染症にかかった被災者もいたという。一方、安否確認はスムーズで、日頃から顔を合わせていたことが功を奏した。地区は孤立したが、避難所では住民が食材やストーブを持ち寄り、「お互いが助け合うしかなかった」。食事面ではボランティアによる炊き出しにも支えられた。
坂本さんは避難所を回り、「風邪ひかんと」「寒いね」など被災者の話を聞くことに徹した。精神的に不安定になる中、「話を聞くと表情も良くなっていく」とつながりの重要性を実感。「日頃から顔の見える関係性が大切だ」と力を込める。
環境変化と孤独死の現実
地震から2年半以上がたち、生活環境は大きく変わった。地区にあった運動場には仮設住宅が建ち、気軽に運動できる場所はなくなった。特に畑での作業が地震以降できなくなり、足腰が弱った住民も目立つという。「精神的な不調にもつながっているだろう」と坂本さんは思う。孤独死も見られるようになり、知り合いは持病が悪化し、仮設住宅で亡くなっていた。「環境の変化はストレスになる」と語る。
「地震前にできていたことが地震後にできなくなる。そんな住民がこれからますます増えるだろう」。町野町地域では災害公営住宅の建設が予定されており、完成して入居が始まると、また環境が変わる。そんな時、「民生委員がどうすくい上げられるか」。坂本さんはつながりの重要性を改めて感じている。



