青森県むつ市と旧大畑町を結んだ下北交通大畑線が廃線から今年で25年を迎えた。本州最北の鉄路を走った当時の車両は現在も有志の手で月に1度、旧大畑駅で客を乗せて動いている。走行可能なディーゼル車の保存は全国的にも珍しいという。
当時のままの車内、乗車体験会に懐かしむ声
8月23日、旧大畑駅で乗車体験会が開かれた。「大畑線キハ85動態保存会」のメンバーが警笛を鳴らし、レバーを回して大きなエンジン音を響かせると、国鉄時代の1962年に製造された車両は徐々に加速していった。
車両は保存されている300メートルの線路や車庫の中を約15分かけてゆっくりと2往復。車内の床は板張りで、天井に扇風機、壁に設置されたフタを引っかけて使う栓抜きが当時のまま残る。来場者たちはボックスシートの車窓から景色を楽しんだ。
秋田県小坂町の公務員の男性(58)は「学生時代に同じ型に乗ったことがあるが、雰囲気が当時のまま。いつまでもこのまま残ってほしい」と懐かしんだ。
廃線から保存活動へ、現在は月1回の乗車会
大畑線は1939年に開通し、下北駅と大畑駅間の18キロを結んだ。赤字路線として1985年に旧国鉄から地元の下北交通に移管されたが、利用客の減少など収益悪化で2001年3月末で廃線となり、バス輸送に転換された。
その2か月後、鉄道を愛する県外の航空会社の社員たちが「動く状態で残したい」と保存活動を開始。2002年から乗車会を始めた。現在は毎年5~10月に月に1回ずつ開いており、来場者は200円で楽しめる。
四半世紀近くたった今も、乗車会には1日で30人ほどが訪れる。近くに住む民生委員の女性(81)は「よく乗っていた車両を今も見られて感慨深い。警笛の音が懐かしく、聞くと当時のことを思い出す」とうれしそうに語った。
高齢化で会員減少、維持費は年間100万円超
高齢化で保存会の会員数は減少し、現在はJRの運転士や航空会社のパイロットなど県内外の会員約10人が無償で車両や線路の保守・点検をしている。
維持管理費や燃料代などは年間100万円を超え、保存会の福岡祐二会長(64)は「これ以上会員が減ると、この先続けられなくなる」と危機感を持つ。有志だけでの保管は苦労もあるが、「できる限り今のまま、大事に大事に走らせて、車両が朽ち果てるまで続けていきたい」と話している。



