三重県尾鷲市職員の石川達也さん(36)が今年5月、世界最高峰エベレスト(標高8848メートル)の登頂に成功した。世界の山々を登ったことで日本の山の魅力を再認識し、今後は妻とともに、日本百名山の完登を目指すという。
水産技師としての顔と登山への目覚め
石川さんは同市水産農林事業推進課の水産技師で、藻場の調査や漁業の振興などに取り組んでいる。2019年には三重大で博士号を取得し、定期的に論文を発表している研究者でもある。
30歳の頃、妻の趣味の登山に付き合うようになり、富士山や槍ヶ岳に登頂し、達成感に魅了された。「さらに大きな目標に挑戦したい」と、エベレスト登頂を掲げると、最初は驚いた妻も「とことん楽しんで」と応援してくれたという。
トレーニングとエベレスト挑戦
週末に20キロのリュックを背負い、市内の山でトレーニングを始め、24年にはヨーロッパアルプス最高峰モンブラン、25年には南米大陸最高峰アコンカグアの登頂を果たし、順調に体力と技術を身につけた。
今年4月、登山家の倉岡裕之さんのエベレスト登山隊に加わり、ネパール入り。20日に標高5000メートル以上の場所にあるベースキャンプに到着後は、体を高所に慣れさせるため、少しずつ高度を上げてはベースキャンプに戻る訓練を繰り返した。
過酷なデスゾーンと山頂到達
標高8000メートル以上はデスゾーンと呼ばれる過酷な環境で、一気に登り、下りてこなくてはならない。しかし、酸素ボンベは1回分しかなく、チャンスは1度切り。天候を見計らい、5月15日に山頂に向けて登り始めた。
5日目の19日、雪と強風で顔に凍傷を負った。雪が深く引き返した隊もあったが、石川さんら計9人の登山隊はサポートをしてくれるシェルパが雪を踏み固めて道を作ってくれたおかげで、先に進めたという。
何度も立ち止まり、息を整え、見上げた先に真っ白に輝く山頂が見えた時、「なぜかわからないが涙が出た」。心を落ち着かせ、慎重に一歩ずつ進み、午前7時45分、とうとう山頂にたどり着いた。「大自然の中で自分の小ささを感じたと同時に、努力を積み上げれば登れるんだと実感した」と振り返る。直ちに山を下り、その日は22時間歩き通しだった。
費用と今後の目標
かかった費用は、入山料の約220万円やシェルパの給料、旅費など総額1000万円を超え、「すっからかんになった」。それでも「人生観が変わるほどの感動と達成感があった。生涯忘れられない」と話す。
職場の理解と協力も大きな支えとなり、同僚たちが不在の間の業務を引き受けてくれた。「今後は、エベレスト登頂で鍛えた忍耐力を仕事にも生かしていきたい」と語った。



