岡山市東区の西大寺観音院で2月、裸祭り「西大寺会陽」の宝木争奪戦に参加していた男性2人が死亡した事故を受け、主催する西大寺会陽奉賛会は29日、来年2月の祭りで宝木争奪戦を行わない方向で最終調整を始めた。複数の奉賛会関係者が明らかにした。再発防止に向けた安全対策が整っていないためとしている。
事故の概要と犠牲者
事故は2月21日午後10時頃、福を授かるとされる「宝木」を求めて、約1万人の男衆がもみ合う中で起きた。3人が意識不明となり、岡山市の会社員男性(48)が低酸素脳症で、岡山県倉敷市の自営業男性(58)が多臓器不全で亡くなった。同県美作市の男性(42)は4日後に意識が回復した。
奉賛会の対応と今後の日程
西大寺会陽は、地元企業や消防団の代表らでつくる奉賛会が主体となって実施してきた。関係者によると、来年2月の祭りでの宝木争奪戦について、会長、副会長ら中心メンバーが29日、岡山市内で協議。「伝統を途絶えさせてはいけない」との意見も出ていたが、事故防止策が定まらないことなどから、来年は取りやめる方向でまとまった。今後、役員会で決定し、祭り自体の開催については西大寺観音院と協議する。
奉賛会は7月、弁護士や救護関係者ら5人で構成する第三者機関「西大寺会陽あり方検討委員会」を設置した。2028年以降の開催に向けた事故検証や安全対策を協議しており、12月をめどにとりまとめ、奉賛会に答申する。
過去の事故と対策
西大寺会陽では過去にも事故が起きていた。1987年には参加者が心不全で亡くなり、2007年には参加者の男性が群衆の下敷きになって死亡した。2回の事故を受け、奉賛会は県警や市消防局と連携するため、救助手順などを定めたマニュアルを整備。自動体外式除細動器(AED)を置き、飲酒や群衆への飛び込みといった危険行為を禁止するなどの事故防止対策を講じてきたという。
奉賛会関係者は「安全を最優先にしてきたが、今回このようなことが起きてしまった。新たな再発防止対策がまとまらない状況で争奪戦はできない」と話した。別の関係者も「検討会の意見を待ちたい」と語った。
代替方式と祭りの歴史
宝木争奪戦はコロナ禍で取りやめられたことがある。その際は、住職らが木札を引いて福男を選出する方法や、事前に決めた代表者に宝木を渡す形式で行った。来年、祭り自体は中止せずに、コロナ禍の時と同じような方式にすることも視野に入れているという。
西大寺会陽は、室町時代の1510年、御利益があるとして評判になった守護札を求めて殺到した群衆が、住職の投げた札を取り合ったことが始まりとされる。2016年に国の重要無形民俗文化財に指定され、日本三大奇祭の一つともいわれる。