甘糟が「否認してるんだよ」と言うと、阿岐本が聞き返した。「否認? 何をですか?」
「恐喝だ。でもね、三橋が高校生たちに会ったことは事実なんだ。訴えがあったんだしね」
「会っただけで罪になるんですか?」
「あんたらに会えば、誰だって怖い思いをする」
「それが罪ですか?」
甘糟の反論
それまで阿岐本にすっかり気圧されていた甘糟は、一つ深呼吸してから言った。「そうだよ」
「ただ会うだけで?」
「あんたらが目の前にいるだけで、たいていの人はビビるんだ。あんたらは、それで稼いでいるわけだろう? つまり、恐怖で人を言いなりにして、金を巻き上げるんだ」
阿岐本の応答
「まあ、一般人をビビらせてナンボと考えている同業者は、たしかにおりますな」
「だから暴対法や排除条例があるんだよ。一般人は長年、あんたらに怯えて生きてきた。ただいるだけで暴力の臭いを撒き散らしているんだ。一般人はずっと、暴力団なんてものがなくなればいいのにと思って暮らしてきたんだ」
甘糟はだんだん必死の形相になっていく。しゃべりはじめたら止まらなくなったようだ。恐怖と緊張のせいで、人はしばしばそういう状態になる。
阿岐本がうなずく。「そういう世の中になりつつありますね。私らも早晩、消えていく運命だと思います」
世間話でもするような口調だが、日村にとっては切実な話だ。



