クマに襲われた36歳男性、猪木キックで応戦した数十秒間の死闘
クマに猪木キックで応戦、36歳男性の死闘

2021年7月中旬、秘湯マニアの三浦靖雄さん(36歳)は、軽井沢の西側に位置する石尊山に登っているときに突如としてクマに遭遇した。全速力で突進してきたクマとの格闘はいかなるものだったのか。三浦さんの話を聞いたノンフィクションライターの羽根田治さんの著書『低山遭難 「まさかの遭難」から生きて帰った人たち』(東洋経済新報社)より紹介する――。

最初は「あ、イノシシかな」と思った

時刻は午後2時過ぎごろ、場所は標高1180メートルあたりの平坦地、あと1キロほど歩けば人里に出るというところだった。突然、進行方向右手前方の薮のなかからガサガサという音が聞こえてきた。それは獣が薮のなかを走っているような音だったので、「あ、イノシシかな」と思った。音がする10メートルほど先の薮のほうへ目を向けた次の瞬間、薮のなかからクマが姿を現した。

登山を始めて10年以上になるが、それが初めてのクマとの遭遇だった。クマの体躯は「そんなに大きくはないな」という印象だったが、飛び出してきたクマは間髪を容いれずに全速力でこちらに向かって突進してきた。野湯探しを趣味としている以上、クマと遭遇するリスクが高いことは充分認識していた。このときも、万一に備えてクマよけスプレーをザックのヒップベルトの横にホルダーで装着していた。対処法についても体験談などを読んで勉強し、遭遇した際にはすぐにクマよけスプレーを構えてゆっくり後退するというシミュレーションを何度も行なっていた。

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クマが猛スピードで襲い掛かってきた

だが、クマは唸り声を上げながら、100パーセントの敵意をむき出しにして、猛スピードで襲い掛かってきた。そんな準備も心構えもまったく役に立たないシチュエーションだった。そのときの状況を、三浦はこう振り返る。

「ほんと『マジかよ』と思いました。クマの襲撃が避けられない場合は防御姿勢をとるということも知っていましたが、いきなり襲われたときにカメになるというのは、恐ろしすぎて思い至りませんでした。ある意味、やられるがまま、になるわけですから、逆にすごく勇気がある人じゃないとできないと思います」

文字どおり窮地に追い込まれた三浦が本能的にとった行動は、クマと闘うことであった。唸り声を上げて突進してきたクマに対し、三浦も「うぉおあー!!!」と大声を上げて立ち向かった。次の一文は、事故の顛末を綴って公開した「note」からの引用である。

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