イタリアで2021年に発生した事件で、宝石店主のマリオ・ロジェロ受刑者(72)が強盗を追いかけて殺害したとして殺人罪で有罪判決を受け、右派議員らがこぞって擁護に走る事態となっている。総選挙を来年に控えた政治的な駆け引きが背景にある。
事件の経緯
ロジェロ受刑者は銃を持った3人組の強盗に店に押し入られた際、家族を人質にとられたため動けなかった。強盗が人質を解放して宝飾品を持って店を出たため後を追い、逃走用の車に乗り込んだところで追いつき、車内にいた1人を射殺、もう1人を捕まえて殴り殺した。もう1人は脚を撃たれたが命は助かった。強盗たちの銃は後に偽物と判明した。
右派政党の反応
ジョルジャ・メローニ首相率いる右派連立政権の一角「同盟」と、さらに右寄りの新興極右政党「フトゥーロ・ナツィオナーレ(国家の未来、FN)」が、正当防衛に関する法律の緩和を求める声を上げている。両党は今週、関連法案を議会に提出した。
国家の未来のロッサノ・サッソ議員は22日、「強盗と、激高し身を守ろうとした市民のどちらを取るかと問われれば、真の右派であるわれわれが常に善の側に立つことは明らかだ」と述べた。同盟のマッテオ・サルビーニ書記長も刑務所のロジェロ受刑者を2度訪問し、次期総選挙での出馬可能性を示唆した。
選挙戦略の思惑
ローマのルイス大学の政治学者ジョバンニ・オルシーナ氏はAFPに対し、「これは右派内部における競争だ」と指摘。「世論調査で急速に支持を伸ばしている新党と、その新党に支持層を奪われ、立場を強硬化させることで反撃している古い党との競争だ」と述べた。
調査会社SWGの20日発表の政党支持率調査では、国家の未来が6.7%で同盟の5.5%を上回った。国家の未来を創設したロベルト・バンナッチ氏は元陸軍大将で、移民やフェミニスト、LGBTQ+の人々を蔑視している。同氏はサルビーニ氏やメローニ氏も標的としており、極右のルーツを持ちながらも現実路線を取るメローニ氏に失望する有権者を取り込んでいる。
政権内の動き
メローニ氏自身はロジェロ受刑者への量刑の重さを批判するにとどめたが、同氏の政党「イタリアの同胞」の共同創設者であるグイード・クロセット国防相は「ロジェロ氏の身に起きたことは不当だ」と述べた。同党のカルロ・ノルディオ法相はロジェロ受刑者への恩赦を求める嘆願書を大統領に提出した。野党側はこれを大統領への圧力と非難した。
全国裁判官協会(ANM)は、ロジェロ受刑者の控訴棄却と有罪判決を担当した裁判官らが「殺人および正当防衛に関する法律を適用したにすぎないにもかかわらず」、脅迫や中傷、ヘイトメッセージなどの攻撃を受けていると警鐘を鳴らした。
中道左派の野党ピウ・エウロパのリカルド・マージ党首は、恩赦を求める「ポピュリスト的な圧力キャンペーン」を批判し、「今や(右派の間で)誰が最も無法な主張を展開できるかを競うレースになっている」と述べ、「今やバンナッチ氏がイタリア右派の真のリーダー、つまり次期指導者であり主導権を握る人物のように見え、他の者たちは彼の提案に追従している」と付け加えた。



