日本文学の翻訳が世界各地で進む中、エジプトの日本文学研究者ヘバトッラー・アブーバクル・モハメド(ヘバ・バクル)さん(33)とモンゴルの翻訳家オチルフウ・ジャルガルサイハンさん(62)が早稲田大学国際文学館の招きで来日し、対談を行った。
モンゴルの日本文学翻訳事情
ジャルガルサイハンさんは、モンゴルでは1992年の体制変革後、日本語から直接翻訳された日本文学が入ってくるようになったと説明。モンゴルの人口は360万人と少ないが、英雄叙事詩などの伝統があり、文学的な感性が培われているという。翻訳の範囲は司馬遼太郎から『源氏物語』まで幅広く、村上春樹の『1Q84』の翻訳には長い時間をかけたと語った。
エジプトの翻訳環境
ヘバ・バクルさんは、エジプトでは大学の日本語学科整備により、日本語から直接翻訳できる訳者や研究者が育ったと指摘。アラビア語が共通言語のアラブ圏では、一度翻訳されれば広い地域で読まれる可能性があるという。自身は桜の文学を研究し、坂口安吾の『桜の森の満開の下』などに触れ、桜に美しさだけでなく恐ろしさや寂しさといったイメージがあることに驚いたと述べた。
文化を伝える責任
ジャルガルサイハンさんは、日本文学を届けることは単なる娯楽ではなく、背後にある日本の文明や文化、日本人の心を伝える重い責任だと強調。好きな表現として福沢諭吉の「天は人の上に人を造らず」や『源氏物語』の「しのぶ」を挙げ、「しのぶ」の精神を日本人が最も知っているのではないかと語った。
ヘバ・バクルさんは「もののあはれ」という言葉にひかれ、長く続かないからこそ美しいという考え方に感動したと話した。



