インド・ムンバイで先月、食品安全検査官がアイスクリームサンドで有名なデザートパーラーの立ち入り検査を行った際、店舗ではネズミやハエ、期限切れの香料が見つかった。また、じっくり煮込んだマトンやビーフシチューで人気の別のレストランでは、不衛生な容器に保管された肉、油で汚れた床、虫やカラスが店内に入り込む可能性のある開いたままの窓が確認された。
人口2000万人超の大都市ムンバイで行われた立ち入り検査の結果、これらの飲食店は閉鎖を命じられた。検査はここ数年で最も厳しいものだった。インドの経済中心地である同市の住民は自国の食文化に強い誇りを持っているが、衛生管理の欠如を理由とした有名店の営業停止処分については、多くが歓迎している。
改革を主導するトゥカラム・ムンデ氏
この取り組みを主導しているのは、マハラシュトラ州の食品安全規制当局の新たな責任者トゥカラム・ムンデ氏だ。「法律を守っているなら、恐れることはない。守らない者には隠れる場所はない」とムンデ氏はAFPに語った。
7月には、約900の事業が検査の対象となり、100店舗以上で営業免許が一時的に停止された。この取り組みでは、トップレベルのレストランや高級ホテル、約100年の歴史を持つインドクリケットクラブの食堂まで、あらゆる場所を対象としている。
ムンデ氏は、多くのオーナーが基本的な食品安全のルールすら知らないことに驚いたと話す。「原材料の検品や品質確認、保管・加工方法の他、飲食店に適した条件など、基本的なことを知らない人が多い」
支持する市民と反発する業界
インドにもしっかりとした食品安全の枠組みがある。しかし、実際に機能していない側面があるのは事実だ。2022~25年の政府データによると、連邦規制当局が検査した食品のうち約6分の1が主要な基準を満たしていなかった。
人々は、基準を満たさない屋台の存在を認識している一方、実績のあるレストランに対してはより高い基準を要求する。ムンデ氏の厳しい手法は、違反を見逃すために官僚に賄賂を渡す業者がいると信じる住民からの支持を得ている。市民からは、「ムンデ氏のような役人が各部署に必要だ」「汚職や不正は、このような役人の厳しい行動によってのみ抑制できる」といった声が聞かれる。
しかし、ホテル業界団体からは、過剰な対応だとして反対意見が上がっている。「事前通知や是正の機会なしに営業免許を突然停止したり終了したりすることは重大な懸念事項だ」と業界の3団体は声明を発表。ナレンドラ・モディ首相に直訴した。
裁判所も介入を始めている。地元メディアによると、ムンバイの高等裁判所はホテルの営業免許停止命令を阻止し、「ここはインドなのだから」としながら、規制当局に対応を和らげるよう指示したとされる。不安は屋台店主らの間にも広がっており、多くが「次は自分たちかもしれない」と不安を隠せずにいる。
これまでの異動は20回以上
「小さな屋台が閉鎖されたら、どこに行けばいいのか?家族や子どもを養わなければならない」と、屋台でサンドイッチを販売するアショク・ベルマさんは言う。
5月に就任したばかりのムンデ氏は、批判の多くは筋違いだとし、営業免許が停止されたのは一部のみだと主張する。「ただ、人の胃袋に入るものである以上、不衛生で危険な食品については妥協しない」
インドの食品安全問題について専門家は、構造的な問題であり、検査だけでは解決できないと指摘する。人員不足は最大の課題の一つだ。マハラシュトラ州の規制当局職員は400人未満だが、本来であればその倍以上の人数が必要とされている。食品安全コンサルタントのサンジャイ・インダニ氏は「適切に機能させるには理想的には2000人必要だ」と語る。
多くの住民は、権力者の利益を損ねた官僚が頻繁に異動させられるインドの慣習を背景に、ムンデ氏が抜本的改革を完了するまで留まれないのではないかと懸念している。事実、ムンデ氏をめぐっては、20年以上のキャリアで20回以上異動させられたと報じられている。
それでも、同氏は億万長者のハルシュ・ゴエンカ氏を含む裕福で影響力のある人々からも支持を受けている。ゴエンカ氏はSNSへの投稿で、「権力者が一般人と同じように扱われることほど、市民の信頼を素早く回復させるものはない。それをもたらした官僚を異動させることほど、信頼を素早く破壊するものもない。今回ばかりは違うことを願う」と述べた。
さらなる異動への懸念は少しもないというムンデ氏。不安に思うことはないとしながら、「配置された場所での自身の役割を見つめ、できる限り最善を尽くすだけだ」とAFPに語った。



