計測ソフトなどを手掛けるアイサンテクノロジー(愛知県名古屋市)は6月19日、子会社の宏達(広島県広島市)において、同子会社の元取締役が架空売上や会社資産の着服などの不正を行っていたと発表した。特別調査委員会の調査報告書によると、連結営業利益への損害影響額は累計約4900万円に上るとしている。
元取締役が一人で全業務を掌握、架空売上を計上
報告書によると、元取締役のX氏は計測機器の仕入れから在庫管理、検定、検収、受注、出荷、価格決定、売上計上、売掛金消し込みまでを一人で処理できる立場にあった。同氏は権限を悪用し、特定の取引先に商品を原価割れで販売したことを隠蔽(いんぺい)する一方、利益を水増しするための架空売上を計上。それにより捻出した架空の売掛金を、あとから取り消す行為を繰り返していた。
さらに、会社資産の計測器をインターネットオークションで転売したり、簿外品(帳簿に記載がない物品)を販売し、それらの代金を個人口座に入金していたという。損害影響額の内訳は、在庫差異の修正が3600万円、売掛金の修正が200万円、その他修正が1100万円で、累計4900万円。特別調査委員会は、一連の不正はX氏が単独で行ったもので、組織的な関与は認められなかったとしている。
発覚の契機はマーケティングセンターでの売上計上の異常
発覚の契機は2026年3月、宏達のマーケティングセンター(長野県上田市)で、実際と異なる商品による売上計上が見つかったことだった。宏達の代表取締役社長が同センターを訪れた際、中古計測器4台の売上金額に違和感を持ち、請求書を調べると、別の商品の売上だったことが判明。仕入れ元とする取引先に問い合わせると、そうした販売はしていないとの回答があったという。その後の社内調査で、新品計測機器を中心に在庫差異が広がっていることが判明した。
監査法人が立ち会う期末の検収では、X氏は在庫差異の発覚を避けるため、外部監査の預け先の担当者に預け証の数量を実際より多く記録させていた。さらに、レンタル品の計測器を自社所有の在庫と見せかけ、立ち会いをやり過ごしていた。請求書・納品書は会計・在庫管理システムと連動しない「Excel」で独自に作成・発行しており、書類と会計データが食い違っても管理部門が気付けない状況だったとしている。
要因は権限集中とシステムの不備、元取締役は解任
特別調査委員会は今回の不正について、複数の要因を挙げた。1つは、中古計測機器の販売ノウハウや業務権限がX氏個人に依存し、周囲が誤りに気付いて正す相互けん制が働かなかったこと。もう1つは、販売管理システムの伝票をX氏が自由に書き換えられ、請求書や納品書もシステムと切り離して作っていたため、不正が表面化しにくかったことだ。
加えて、X氏には前期比1割増の売上目標などの達成が求められており、業績への執着が利益の水増しを促したとみている。また、税理士から滞留債権(期日を過ぎた未回収金)や、監査役から在庫の二重計上について指摘を受けながら抜本的な対策が先送りされたこと、固定化した取引先との間に馴れ合いが生じ、原価割れの安値販売を許す関係ができていたことも要因に挙げた。
同社は6月19日の取締役会で、再発防止策と関係者処分を決議。アイサンテクノロジーの代表取締役社長は月額報酬の30%を3カ月、宏達の代表取締役社長は20%を3カ月、それぞれ自主返上する。不正を行ったX氏は6月12日付で解任。同氏への法的措置も検討しているとしている。



