アラブ首長国連邦(UAE)ドバイ発イスラエル・テルアビブに向かっていたフライドバイのFZ1073便がヨルダン国境付近で急降下し、乗客らは即座に異常を察知した。同機は9月30日、コックピットで機長と副操縦士が争い、その後サウジアラビアのタブーク空港に緊急着陸した。乗客やイスラエル当局によると、これは「副操縦士による機長殺害未遂事件」だった。
急降下の瞬間と緊急着陸
乗客のアルモグ・イタリーさんはAFPに対し、「最初は激しい乱気流に見舞われているのかと思ったがそうではなかった」と語り、数秒間で数千フィート降下した感覚を「ジェットコースター」に例えた。航空追跡ウェブサイト「フライトレーダー24」のデータによると、同機は飛行中に急激に高度を下げ、グリニッジ標準時(GMT)30日午前5時21分(日本時間午後2時21分)の段階で約3万4000フィート(約1万360m)だった高度が、わずか1分後には1万7000フィート(約5180m)未満まで急降下していた。
イタリーさんは乗客らの間に「パニック」は広がっていなかったと言い、前方にいた乗客らが事態の鎮静化に協力したと説明した。その後、同機は制御を取り戻し、タブーク空港に緊急着陸した。緊急着陸から数時間後、別のフライドバイ機で無事にテルアビブに到着したイタリーさんは、「本当に長い一日だった。運良く無事に終わってよかった」と安どの表情を見せた。
乗客の証言と機内の様子
同じく搭乗していたミリヤム・シラ・オハヨンさんは、争いが起きている間、機体は「ほぼ制御不能な状態」だったと説明した。サウジアラビアに緊急着陸した際に、テルアビブ近郊のベングリオン空港で到着を待っていた母親と電話でつながっていたオハヨンさんは、スピーカーフォン越しに報道陣の取材に応じ、「副操縦士は機長を殺して、乗客もろとも墜落自殺を図ろうとしていた」と語った。
「まさに墜落しかけていたが、機転を利かせた多くの人が副操縦士を取り押さえ、無力化した」とし、「応急処置を行った医師や、負傷した2人の手当をした人々もいた。機長を除いて怪我人は出なかったが、本当の恐怖は墜落であり、それこそが副操縦士の狙いだった」と続けた。別の乗客のハイム・ナザロビッツさんは「非常に恐ろしかった」と述べ、一時は「もうだめだと思った」と付け加えた。
機内映像と現地の対応
機内で撮影された動画がイスラエルのSNSユーザーによって再投稿された。動画には、頭部の傷から血を流した男性の乗客が助けを求め、同機がサウジアラビアに向かっていると話している様子が捉えられていた。男性はヘブライ語で「機内で攻撃があった。テロリストを鎮圧し、今は着陸の準備をしている」と話し、「私の声が聞こえる人は誰でもいい、助けが必要だ」と訴えていた。
乗客の一人がAFPに送った写真には、子どもを含む搭乗客がタブーク空港のラウンジに集まり、床に座り込んでいる様子が写っていた。中には血のついた白いTシャツとジーンズを着用した男性の姿もあった。イスラエルはサウジアラビアと正式な外交関係を結んでいないが、イタリーさんによると、着陸後、現地では「非常に温かい」歓迎を受けたという。