クマ駆除の自治体に「殺すな」抗議519件、脅迫めいた電話も
クマ駆除の自治体に抗議519件、脅迫めいた電話も

住宅街に出没したクマを緊急銃猟で駆除した自治体に対し、「クマを殺すな」などの抗議が続いている。動物愛護が主な理由だが、どなりつけたり中傷したりする事例もあり、京都府舞鶴市では市長が「脅迫めいた問い合わせはやめて」とSNSで呼び掛けた。駆除を巡る抗議で業務に支障が出るケースもある。

舞鶴市に519件の抗議・意見

舞鶴市は9月3日、住宅の軒下に居座ったクマ2頭を麻酔銃で捕獲。クマはその後、殺処分された。担当する市農林課には同日以降、抗議の電話が相次いだ。10月14日現在、電話やメールで寄せられた抗議や意見は計519件に上る。

市によると、住所を答えた人の大半は京都府外で、「クマをなぜ殺したのか」「命を奪うのはよくない」などの批判が目立った。「職員は死んだ方がいい」「頭が悪い」という電話もあり、農林課長は「誹謗(ひぼう)中傷のようなものもあった」という。

市長がSNSで呼びかけ、警察相談も視野

鴨田秋津市長は9月4日、自身のXアカウントで「動物愛護を否定しませんが、脅迫めいた問い合わせはやめて下さい」と投稿した。市はその後、クマが住宅の柿を食べており、追い払っても戻ってくる可能性が高い危険な状況だったと説明した。

罵倒や中傷について、鴨田市長は同月25日の記者会見で「警察への相談を含め、毅然(きぜん)と対応したい」と話した。

総務省調査で17自治体が「業務支障」

クマが市街地に出没し、駆除される事例が相次ぐ。自治体への苦情や抗議で、職員の業務に影響するケースもある。

総務省が今年7月に公表した調査によると、過去にクマの被害対策に当たった40自治体のうち、17自治体が「苦情で業務に支障が発生」と回答した。内容は「威圧的な言動を含んだ1時間超の電話への対応」や「来庁者が対応した職員を無断撮影してインターネットに投稿」などがあった。

ハンターにも抗議が寄せられる。鳥取県猟友会には「クマを殺さないように」など厳しい声が届くという。

抗議する側の主張と専門家の見解

抗議する人はどう考えているのか。東京都八王子市の女性(57)は今春以降、SNSでクマの駆除反対のデモを呼びかけ、環境省や首相官邸前で実施している。駆除を行った自治体に電話で問い合わせ、クマの保護を求めている。

女性は人命に関わる駆除を否定しないが、「どこまでを人の日常生活圏と捉えるかなど、緊急銃猟の条件には曖昧さがある。国と自治体は『駆除一辺倒』になっている」と指摘する。「里山の草木を刈り取って山と市街地の間の見通しを確保したり、山中にエサとなる植物を増やしたり、人里に寄せ付けない対策を尽くすべきだ」と訴える。

一方で、「感情的に職員をどなっても何も変わらない。意見を聞いてもらえるよう、私は冷静に話している。説明を受けて理解できることもある」と話した。

池内裕美・関西大教授(社会心理学)は、悪質な抗議について「自分は正しいから相手を傷つけても構わないと考える心理学の『道徳的正当化』が働いている可能性がある。行政側が法的手段も辞さないと意思表示することで、悪質な言動への抑止効果が期待でき、『組織が守ってくれる』という職員の安心感にもつながる」とした。

クマ対策の現状と緊急銃猟の実績

クマは冬眠を前にした秋頃、エサを探しに人里に現れることが増えるとされる。笹川環境相は24日午前、クマ対策の視察のため鳥取県を訪れた。

緊急銃猟は、市街地などに出没したクマやイノシシへの猟銃使用を市町村の判断で認める制度で、昨年9月施行の改正鳥獣保護法で導入された。緊急性があることや、銃猟以外で捕獲が困難であることなどの条件がある。環境省によると、実施件数は10月13日時点で96件。