自閉スペクトラム症(ASD)を持つりお米さんが、妻の祖父の田んぼを引き継ぎ米農家として活動する中で、自身の特性を強みに変えた体験を明かした。家族の反対を押し切って農業の道に進んだ彼が、農作業の様子とともに「僕は自閉スペクトラム症、通称ASDという発達障害を持っています」と投稿した動画は134.7万回再生を超え、「弱点を自分の武器に変えるってすんごい事ですよ」「極められるのはすばらしい事です」などのコメントが寄せられた。
「社会不適合者」と思っていた日々
りお米さんは、社会に出てから自身の特性による生きづらさを強く感じるようになったという。「一番は社会に出てからです。興味のないことは全然できないですし、相手の気持ちや場の空気をうまく読み取れず、悪気はないのに誤解を招いてしまうこともありました。当時は自分のことを、本気で『社会不適合者』だと思っていました」と振り返る。
幼少期については「集団行動や周りに合わせることはすごく苦手でした。自分では普通に話したつもりでも、相手との受け取り方が違ってしまい『変わってるね』と言われることもありました」と語る。しかし「社会人になってからと比べたら、幼少期はそこまで苦労しなかった気がします」とも述べ、周囲の支えがあったことを示唆した。
米作りとの出会いと特性の転換
りお米さんは、自身の特性と向き合う中で「自分の特性を否定するのではなく、『自分に合う環境を探そう』と思うようになりました。そして、その答えが米作りでした」と語る。米作りを始めたきっかけは、妻の祖父が作る米を無料でいただいたことへの恩返しだったという。
「僕は興味のあることに対して異常なほどこだわりが強い性格です。米作りを始めてからは、栽培方法を調べたり本やネットで何時間も情報を集めたり、どうすればもっと良いお米が作れるか考えている時間が全く苦になりませんでした」と説明。会社員時代には「面倒くさい」「考えすぎ」と言われることもあったこだわりが、米作りでは品質に直結したとし、「初めて自分の強みだと思えたんです。その時に、『自分の特性は欠点ではなく、米作りにおいては最強の武器になる』と確信しました」と述べた。
妥協を許さない完璧主義の追求
具体的なこだわりについて、りお米さんは「土作り、水管理、肥料、品種の特徴、病害虫対策など、気になったことは1つひとつ納得するまで調べます」と話す。「どの作業にこだわっているかというより、『米作りそのものに妥協せず、完璧を追求し続けている』と言った方が、自分らしい表現だと思います」と語った。
「僕は妥協が苦手で、逆を言えば完璧主義なんです。例えば、田んぼの雑草も『あとでまとめて抜けばいい』と考える人もいますが、僕は生えていたら抜きたくて仕方なくなってしまいます。他にも、今まで使ってた肥料よりもっと自分の田んぼに合う肥料があるのではないかと追求したりします」と説明。これまでの常識を疑う思考を持ちながら、自分にしかできない米作りを目指しているという。
SNS発信と新たな決意
ASDを公表した動画に寄せられたコメントの中には、「私の子どもも同じ障害があり、将来が不安でしたが、勇気や希望をもらえました」というメッセージがあったという。りお米さんは「自分の発信が誰かの背中を押すことができるんだと初めて気づきました」と語る。
「もちろん厳しい言葉をいただくこともありますが、それ以上に『前向きになれました』『救われました』と言ってくださる方がたくさんいます。だから今は販売のためだけでなく、ASDがあっても自分に合う場所を見つければ特性は武器になるということを、自分自身の生き方を通して伝えていきたいです。それが誰かにとっての勇気や希望になれたら嬉しいです」と述べた。
生きづらさを感じる人へのメッセージ
最後に、りお米さんは「無理に普通になろうとしなくていい」と強調する。「僕は大した実績もないので立派なことは言えませんが、ずっと『普通にならなきゃ』と思って生きてきて、どれだけ頑張っても普通にはなれませんでした。だからこそ伝えたいのは、『無理に普通になろうとしなくていい』ということです」と語った。
「人にはそれぞれ向いている環境と向かない環境があります。僕は社会では扱いづらい人間だったかもしれません。でも、米作りに出会ったことで、自分の特性は短所ではなく武器になると気付きました。今はまだ居場所が見つかっていない人も、それはあなたに価値がないからではなく、まだ自分に合う場所に出会えていないだけかもしれません。自分を否定せずいろいろなことに挑戦してみてください。いつか『ここなら自分らしく生きられる』と思える場所に出会えた時、今まで短所だと思っていたことが、誰にも負けない武器になる日がきっと来ると、僕は信じています」と締めくくった。



