専門家約20人が参加、公認心理師や産婦人科医も初参加
上唇や上あごが完全にくっつかない状態で生まれる先天性疾患「口唇口蓋裂」の患者とその家族が、治療の専門家らと一泊して交流する「神戸カンファレンス・サマーキャンプ」が、2026年8月1日から2日にかけて、神戸市灘区の学習施設「市立自然の家」で開催される。このキャンプは27回目を迎え、現在参加者と活動を支援する協力者を募集中だ。
口唇口蓋裂は、妊娠初期に胎児の顔の左右から成長する組織がうまく癒合せず、唇が割れた「口唇裂」や、上あごが閉じず口腔と鼻腔がつながる「口蓋裂」が生じる疾患。原因は不明で、日本では約500人に1人の割合で出生するとされる。見た目の問題のほか、母乳やミルクをうまく飲めない、言葉の発音が困難などの影響があるが、成長段階に応じた適切な治療や手術を受ければ、通常の生活を送ることが可能だ。
キャンプの歴史と目的:診察室では聞けない本音を
このキャンプは「診療の場だけでは分からない、子どもや親の思いを知ろう」と1997年に始まり、これまでに延べ1200人以上が参加。診察室の外でキャンプを楽しみながら交流することで、日頃は相談しにくい悩みを打ち明けられ、同じ悩みを持つ患者や保護者同士のつながりも生まれているという。
今年は形成外科医や矯正歯科医、言語聴覚士など治療に関わる専門家約20人が参加。さらに公認心理師と産婦人科医が初めて加わる。
プログラムは8月1日午後2時半に六甲山上の市立自然の家に集合。保護者向けには専門家による勉強会や個別相談会を開き、子どもたちはキャンプファイアやスイカ割り、アスレチック体験などを楽しむ。歯磨き指導や懇親会も予定され、2日午後2時に解散する。
参加費と申し込み方法、クラウドファンディングで支援を
参加費(食事代込み)は大人5230円、中高生4330円、小学生と幼児は4210円。申し込みは7月25日までに専用サイト(QRコード)から行う。また、家族の参加負担を軽減するためのクラウドファンディングを、7月23日まで「CAMPFIRE」で受け付けている。問い合わせは山本歯科医院矯正歯科クリニック内の事務局(0798-54-0863)。
主導する歯科医・山本一郎さん「白衣を脱ぎ、対等な立場で」
キャンプを主導してきた山本歯科医院矯正歯科クリニック(兵庫県西宮市仁川町)の歯科医・山本一郎さん(78)に、キャンプの歩みと意義を聞いた。
山本さんは大阪歯科大卒業後、口唇口蓋裂の治療が盛んな英国グラスゴー大学に留学。1976年の開業以来、クリニックで治療に取り組んできた。治療法が十分に確立されていない中、約200人の患者にアンケートを実施し、現状把握に努めた。
特に着目したのは、赤ちゃんを育てる母親へのケアだ。「出産後にお祝いの言葉もかけられていない母親がいた。だからまず『おめでとうございます。かわいいね』って声をかけた。母親が我が子に愛情をもてるように接するところから始めた」と振り返る。積極的な授乳を促し、「あごを動かしてごくごく飲む子は、あごの形もきれいになり、治しやすくなる」と伝えてきた。「よく飲む子にするには、親が元気にならないと。育児への心持ちを変えなければいけないと考えた」という。
キャンプの目的は診察室の外に出て交流することだ。「診察室では白衣の権威を感じさせてしまう。白衣を脱ぎ、対等な立場で患者や家族と話したかった。夜には少々お酒も入って、ざっくばらんに語り合う」と狙いを語る。山本さんは「口唇口蓋裂の治療は、手術だけで終わりではない。発音障害の解消や、心理的なサポートも必要」とし、「患者さん同士も待合室で顔をあわすだけでは仲良くなれない。一人で悩まずに参加してほしい」と呼びかけている。



