認知症対策に最も効果があるのは、薬ではなく「毎日外へ出て歩くこと」だ。40年間の医師生活で2500人の最期を看取った長尾和宏さん(医学博士)は、その著書『病気の9割は自分で治せる!』(PHP新書)でこう断言している。特に、朝に日光を浴びながら歩くことでメラトニンの分泌が促され、よい眠りにつくことが重要だという。
脳に最も効果があるのは「小旅行」
長尾さんは、『歩く人はボケない』(PHP新書、2025年)でも、認知症になりたくなかったら、進行させたくなかったら、とにかく歩くことを推奨している。高齢になればなるほど人は歩かなくなるが、認知症対策は糖尿病と基本的に同じで、食事管理とこまめに歩くなどの運動が何より大切だ。毎日外出すれば、「脳トレドリル」をしなくても、さまざまな刺激を受けて脳も活発に動くという。
そして、いちばん効果があるのは「小旅行」だと長尾さんは言う。日帰りでも一泊でも、どんどんいろいろなところに出かけてみるととてもいい。近場でもよく、温泉なら最高だ。非日常の場所に移動することで自然に歩くし、脳も刺激される。長尾さんはこれを「旅行療法」と呼んでいる。美しい景色や家族との時間は、記憶障害があっても「感情の記憶」として心に残るだろう。
旅行の際はGPSや連絡先カードも必須
そうした幸福感は生きる意欲につながり、元気が出る。ただし、無理のないスケジュールにすることが大切だ。訪問する場所が多くなりすぎると、どこに行ったのか思い出せなくなるリスクが増える。現地での移動は短時間で、休憩を多めにとることも大事だ。
また、徘徊や混乱への備えも忘れてはならない。GPS機器や連絡先カードの携帯、同行者がサポートしやすい備えをすることが推奨される。過去に訪れたことのある思い出の場所を選ぶのもおすすめで、回想を促し、安心感をもたらすため、気分が向上するという。週の前半は空いている宿も多い。
温泉で温まることは温熱療法にもなる。40~42度ぐらいの温泉で温まれば、ヒート・ショック・プロテイン(HSP)というタンパク質が作られ、免疫機能が上がる。長尾さんは「小旅行は認知症にとってとても良い養生法」とし、できれば毎月行くことを勧めている。



