リハビリテーション科医の安保雅博氏は、肩の状態を見れば老化の始まりや進行度が一目でわかると指摘する。同氏によれば、腕が上がりにくい、天井を見上げられないなどの4つのサインが老化の初期兆候であり、これらを放置すると転倒リスクが高まり、最終的には寿命にも影響するという。
最初の老化は肩に現れる
厚生労働省の健康情報サイト「生活習慣病などの情報(旧e-ヘルスネット)」によると、全身の骨格筋量は20代を100とした場合、70代では70まで低下する。つまり、約3割の筋肉が失われる計算だ。筋肉は年齢とともに均等に減るわけではなく、「歩く」「立つ」「姿勢を保つ」ための筋肉が特に減少しやすい。これは特別な病気がなくても起こる自然な変化だが、自覚症状がほとんどないため、多くの人が気づかないうちに老化を進行させる。
安保氏は、この老化の最初の変化が肩に現れると説明する。肩の関節可動域が狭くなることで、姿勢が崩れ、全身へ影響が波及する。
頭の重さが姿勢を崩す
頭の重さは体重の約8%で、体重60キロの人なら約5キロに相当する。これは一般的に販売されている米袋1袋分の重さだ。年齢を重ねても頭の重さは変わらないが、それを支える背中の筋肉は衰える。その結果、背筋は頭を支えきれなくなり、首から頭が前に出てしまう。
この姿勢の崩れが以下のような連鎖を引き起こす。
- 全身の筋力(特に背中の筋肉)が衰え、肩の関節可動域が狭くなる
- 肩が前に倒れ、首から頭が前に出る
- 背中が丸まり、重心が後ろに傾く
- 骨盤が後ろに傾き、膝や股関節に負担がかかる
- 重心バランスが崩れて不安定になり、転びやすくなる
肩の老化を示す4つのサイン
安保氏は、肩の老化が始まっていることを示す4つのサインを挙げている。
- 腕が上がりにくい
- 天井を見上げられない
- 肩が前に出ている
- 背中が丸くなっている
これらのサインに気づいたら、早めの対策が必要だ。多くの人は「まだ大丈夫」「年のわりには元気」と思いがちだが、小さな姿勢の崩れの積み重ねが転倒につながる。
「昔の自分」を基準にしない
安保氏は、「以前できたことができない」という変化が老化の分かれ目だと指摘する。過去の自分と比較するのではなく、現在の体の状態を客観的に評価することが重要だ。膝の曲がりなどは無意識のうちに姿勢を補正するための帳尻合わせであり、これも老化のサインである。
同氏は著書『歩幅を見れば、寿命がわかる 「死ぬまで歩ける体」のつくり方』(アスコム)で、肩のサインを早期に発見し、適切な運動や生活習慣で歩行寿命を延ばす方法を提案している。



