イスラエルのヘブライ大学などの研究チームが2024年にPNASで発表した論文「Sex bias in pain management decisions」は、医療現場における痛みの治療において、患者の性別による格差が存在することを明らかにした研究報告だ。
女性患者への鎮痛剤処方率が低い
データ分析によると、救急外来を受診した女性患者は、男性患者に比べて鎮痛剤を処方される確率が一貫して低いことが判明した。背景には、医療従事者が女性は男性よりも痛みを大げさに訴えるという偏見を持っている可能性が指摘されている。
研究チームはまず、イスラエルの病院の救急外来における約1万7000件の医療記録を分析した。その結果、あらゆる種類の鎮痛剤の処方率において、男性が47%であったのに対し、女性は38%にとどまった。
痛みのレベルが同じでも差が生じる
申告した痛みのレベルが同じでも、女性患者は男性患者より鎮痛剤を処方される割合が低い。この差は、年齢層や患者自身が申告した痛みのレベル(軽度から重度まで)に関係なく共通して見られた。さらに、担当する医師の性別が男女どちらであっても、女性患者への処方が少なくなる傾向は変わらなかった。また、女性患者は痛みの程度を看護師に記録されにくく、救急外来での滞在時間も男性より平均して約30分長かった。
女性患者への処方の少なさは、担当医師が男性でも女性でも変わらなかった。
米国のデータでも同様の傾向
同様の傾向は、特定の国や医療施設に限られたものではなかった。米ミズーリ大学の病院における約4300件のデータを追加検証したところ、患者が申告した痛みの強さに男女差がなかったにもかかわらず、鎮痛剤を処方された割合は男性の31%に対して女性は26%と、やはり女性の方が低い結果となった。
米ミズーリ大学のデータでも、申告した痛みの強さに男女差がないにもかかわらず、女性の方が鎮痛剤の処方率が低かった。
医療従事者の偏見を検証する実験
なぜこうした差が生まれるのかを探るため、研究チームは医療従事者109人を対象とした実験を行った。参加者に10段階中9という強い痛みを訴える患者のシナリオを提示し、実際の痛みの程度を評価するよう求めた。
その結果、シナリオの患者が女性に設定されている場合、医療従事者は男性に設定されている場合よりも、痛みの程度を軽く見積もる傾向が確認された。



