ウミガメ保護の第一人者が警鐘
大分県内のウミガメ保護・調査の第一人者である内田桂理事長(73)が、30年後を見据えた産卵環境の保全と若い世代への活動継承の重要性を語った。内田氏は「NPO法人おおいた環境保全フォーラム」を率い、環境省や大分県内外の自治体と連携し、ビーチクリーンや子ガメを捕食するタヌキの対策などに取り組んでいる。
活動のきっかけは絶滅危惧種の消失
内田氏は元々自然が好きで、仕事で自然公園の森作りに携わる傍ら、ため池の生物調査を行っていた。転機は2006年、絶滅危機にある国内希少種のベッコウトンボが大分市内で見つかったことだ。「ニュースを聞いて調査に入り、手を尽くしたが、開発で生息地が失われた。個体の命を守っても、生きる場所がなければ意味がないと痛感した。『手遅れになる前に、守れる環境は早めに守ろう』という予防原則が活動の柱になった」と振り返る。
その後、2010年に磯崎海岸(大分市)でウミガメの卵を初めて発見。地域の仲間と泊まり込みで見守り、孵化した子ガメを夜の海へ見送った感動が駆動力となり、ウミガメの産卵場所保全活動を始めた。
現在の活動とウミガメを取り巻く現状
主な活動は海岸清掃などの産卵環境保全と保護調査、アライグマなどの特定外来生物防除対策支援だ。2018年からは漁網に絡まった個体の胃を調べるプラスチック誤食調査と啓発活動も続ける。「アオウミガメの約6割がビニールなどを食べている」と内田氏。また、環境省などと連携し、屋久島(鹿児島県)で子ガメを食べる国内外来種のタヌキの生息分布調査や捕獲、海岸への侵入防止試験も行っている。
大分県内のウミガメ産卵は激減している。2013年頃は年間13~15回あったが、近年は減少。内田氏が最後に確認したのは2023年の高山海岸(佐伯市)で、その後は産卵がない。「産卵できる海岸の減少や海水温上昇、漁網や針にかかることなど複合的要因で、全国の産卵地も減少している」と警鐘を鳴らす。
次世代への継承が最大の課題
内田氏は最大の課題として「次世代への引き継ぎ」を挙げる。「私たちが見送った子ガメが大人になって戻るまで20~30年かかる。法人メンバーも高齢化しており、若い世代や子どもたちへのバトン継承が急務だ」と語る。
「ウミガメが生きていける海を守ることは、回り回って自分たちの暮らしや未来を守ることにつながる。ウミガメを入り口に、自分事として、ウミガメが戻って来てくれる海岸を残す活動に関心を持ってほしい」と訴えた。
内田桂氏の経歴
内田氏は大分県別府市出身。大分工高卒業後、大阪の専門学校で工業化学を学び、鐘淵紡績(旧カネボウ、現クラシエ)に就職。帰郷後、大分市の造園会社で自然公園やゴルフ場のランドスケープ設計に携わる。2004年に環境関係の最高峰国家資格「技術士(環境部門)」を取得。在職中の2009年にNPO法人おおいた環境保全フォーラムを設立した。現在は県などから保護を依頼されたワニガメとカミツキガメ計2匹を飼育している。



