腎硬化症で3年半前から透析を受けている70代の男性が、高リスクの前立腺がんと診断されました。放射線療法とホルモン療法を併用し、現在は経過観察中です。治療が透析に与える影響や、今後の再発リスクについて、がん研有明病院副院長で泌尿器科部長の米瀬淳二医師が回答します。
高リスク前立腺がんの診断と治療開始
令和6年10月、透析を受けている医院でPSA(前立腺特異抗原)値を測定したところ、4でした。一般的にPSA値が4を超えると前立腺がんの精密検査が勧められます。7年1月に大学病院で精密検査を受けた結果、病期分類T2aN0M0(前立腺内に限局し、リンパ節転移も遠隔転移もない)の前立腺がんと診断されました。前立腺生検の針18本中9本にがん細胞が見つかり、悪性度を示すグリーソンスコア(GS)は8でした。
米瀬医師は「細胞の顔つきの悪い早期がんです。悪性度が高いので限局性前立腺がんの中では高リスクに分類されます。手術ないし放射線療法が推奨される状況です」と説明します。
放射線療法とホルモン療法の併用効果
主治医からは放射線療法とホルモン療法の併用が勧められ、7年7月からホルモン療法のLH-RHアゴニスト製剤であるリュープリンの投与を開始。その3カ月後から放射線療法を行いました。
リュープリンは睾丸からの男性ホルモンの産生を抑えることで前立腺がんの増殖を抑制します。主に転移・再発した前立腺がんの治療に用いられますが、中・高リスクの前立腺がんに対する放射線療法と併用することで、放射線療法単独よりも生存率を上げる効果が証明されています。
リュープリンは2年の予定で継続中で、放射線療法は予定の20回を終了。今年7月の検査でPSA値は0.006と、ほとんど検出されませんでした。米瀬医師は「治療効果が数値に表れている良い状態です。高リスクではホルモン療法を通常2年行います」と述べています。
経過観察と再発時の対応
順調であれば、その後はPSA測定による経過観察となり、最初の3年は年に3~4回、それを過ぎたら半年に1回、5年を経過したら年に1回の測定になります。PSAの数値が2以下と低いうちは安心してよいでしょう。
透析治療への影響については、「透析患者さんは心血管系などの合併症も多いのでホルモン療法の副作用が出やすい懸念はあります。食生活には注意してください。治療効果には影響ないでしょう」としています。
経過観察中に再発した場合、ホルモン療法と放射線療法を受けた後、PSA値は0近くまで低下します。ホルモン療法終了後、1年から数年かけて男性ホルモンが再び産生されPSA値は徐々に上がっていきますが、低い数値であれば問題ありません。放射線療法後は、治療後の最低値から2以上PSA値が上昇した場合に「PSA再発」とされます。PSA検査はCTや骨シンチグラフィーなどの画像診断よりも鋭敏で、PSA再発の時点で画像診断を行い、PSAの上昇速度や男性ホルモンの回復の度合いなどの所見を総合的に判断してホルモン療法の再開を検討します。
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