能登島の海辺の宿「山水荘」、朝どれ魚と自家野菜で震災乗り越え再開
能登島の海辺の宿「山水荘」、朝どれ魚と自家野菜で再開

能登半島のほぼ中央、七尾湾に浮かぶ能登島。里山里海の恵みに育まれた豊かな暮らしが息づく。震災を経て15軒の民宿が営業を再開し、島ならではの温かなもてなしで迎えてくれる。能登島大橋を渡るにつれ、日常はいつしか島時間へと変わる。

海辺に立つ「山水荘」、震災を乗り越え再開

暖流と寒流が交わる能登半島周辺は、藻場が広がる好漁場である。この海の恵みをもてなしへと変えてくれるのが、能登島の北の端、祖母ヶ浦港近くに佇む「民宿 山水荘」だ。七尾湾に面した宿からは漁船や防波堤灯台が見え、旅情を誘われる。

3代目主人の石田直人さんは「大好きな地元の魅力を伝えたい」と、祖父の代から40年以上続く民宿を2014年に継ぎ、島内の民宿では珍しい全室にトイレ・洗面所を備えるレトロモダンな建物に改装した。24年の能登半島地震で建物の一部が被災したが、クラウドファンディングやボランティアの協力もあり営業を再開。「一時廃業も頭をよぎったけど、たくさんの支援やお客さんから励ましをもらい、思い留まることができた」と石田さんは振り返る。

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朝どれ魚と自家野菜の「能登流」もてなし

評判の料理は、漁師もしている石田さんが朝4時に船に乗って鮮魚をとり、金沢の料亭で修業を積んだ経験を生かして自ら調理している。一方で農家も営んでおり、米や野菜も主に自家栽培のものを使っている。「余るほどに出してよろこんでもらうのが能登流スタイル。食べきれんくらい満足してほしい」と主人の石田さん。

夕食の舟盛りには、その朝釣り上げた尾頭付きの地魚を中心に、アジやブリ、イカ、甘エビなどがこぼれんばかりに盛られている。さらに香ばしく焼き上げたブリカマの塩麹焼き、石田さんのお母さんが山で採ってきた山菜のおひたしなど、素材を生かした小鉢が並ぶ。

自給自足で食材をそろえられるからこそ、「食べきれんくらい満足してほしい」(石田さん)というもてなしが生まれる。舟いっぱいにあふれる島の恵みが、その心を物語っている。七尾湾の向こう、半島の山々へ静かに落ちていく夕日を眺めながら、食堂で海の幸を味わう。刻一刻と表情を変える夕景も、島ならではの忘れがたいひとときだ。

野生のイルカと出会う幸せ

翌朝、石田さんが操船する船でイルカウォッチング(有料・要予約)に出かけた。能登島の湾内には野生のミナミバンドウイルカが暮らしている。石田さんは最初にイルカのつがいに出会った20年以上前から、イルカたちを見守り続けてきたという。沖へ進むと、海面に背びれが現れた。船のそばを息継ぎしながら泳ぐイルカたち。エンジン音を気にする様子もなく、ひょこっと顔をのぞかせる姿が愛らしい。

「私たちはイルカの群れの中におじゃまさせてもらっているんです」という石田さんの言葉には、海に生きる命への敬意がにじむ。

食卓を彩る海の幸と山の恵み、そしてイルカがのびのびと暮らす海――。すべてが繋がる島の魅力は、この地に生きる人たちが長年育んできたものだ。手を取り合って震災から立ち上がる島のぬくもりは、潮の香りとともにいつまでも心に残った。

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