iPS細胞を美容サービスに活用、化粧品や洗髪剤で市場拡大 科学的根拠には課題
iPS細胞を美容サービスに活用、化粧品や洗髪剤で市場拡大

iPS細胞から抽出した成分を美容サービスに活用する動きが広がっている。美容液や洗髪剤などに利用され始め、美容分野の市場規模は2030年までの10年間で2倍超に拡大するとみられている。一方、美容効果への科学的根拠は不十分との指摘もあり、情報提供のあり方が課題となっている。

個別の血液から作製した美容液

美容皮膚科「銀座よしえクリニック 都立大院」(東京)内の研究所で8月上旬、担当者が、利用者個人の血液をもとに作製されたiPS細胞から抽出した成分を配合した美容液を作っていた。化粧品大手コーセーなどが同クリニックを通じて2024年から実証実験を進めている次世代の美容サービスだ。

コーセーによると、抽出した成分には、肌を構成するコラーゲンやヒアルロン酸を増やすたんぱく質など200~300種類が含まれている。同社の調査では、角層の水分量が3割超、肌の弾力は1割超アップするという。

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コーセーは、この美容液と、医師が2か月に1度肌状態を診察し配合を見直す仕組みをセットにして年110万円で来年度以降に提供する計画だ。別途、iPS細胞の作製や維持費に約300万円が必要となる見込みだ。同社の担当者は「安全性や有効性を多角的に評価して、全国の医療機関で販売できるようにしたい」と話す。

市場規模は10年で2倍超に

美容分野への広がりは、従来は数億円とも言われた個人のiPS細胞の作製費用が、技術の発展により数百万円で可能になったことが背景にある。調査会社・富士経済は、国内の美容分野の再生医療・細胞治療市場は、2020年の15億円から2030年には2倍超の34億円に拡大すると予測する。

こうした状況を受け、化粧品会社は関連製品の展開に力を入れる。ヴィークレア(東京)は、保管されているiPS細胞から抽出した成分を配合したシャンプーを発売。キナリ(同)はiPS細胞を培養した際の上澄み液(iPS細胞培養上清液)入りのフェースマスクを販売している。

また、iPS細胞を培養する過程で分泌される「エクソソーム(細胞外小胞)」と呼ばれる成分を、若返りや機能改善に効果があるとして、肌や頭皮に注射する治療を提供する医療機関も出てきている。

科学的根拠の不十分さと注意喚起

一方、老化防止や若返りの効果については、具体的な研究や臨床試験の成果はなく、科学的根拠は不十分とされている。医療機関で施術を受ける場合は、自由診療のため料金が高額になり、注意が必要だ。

日本再生医療学会は2024年末、iPS細胞由来のエクソソームによる治療について、「期待される効果が科学的根拠に基づいて確立されているわけではない。治療を検討する際には、医師に対し、治療法の科学的根拠や安全性、リスクに関する詳細な情報を質問してほしい」と注意喚起した。

老化などの研究を行う東京大の山田泰広教授(分子病理学)は「消費者が(若返りを意識づける細胞の)『初期化』というマジックワードに流されないように、企業や学会など専門家らが適切な情報を提供し、将来的には国が指針を策定することも求められる」としている。

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