65℃を超える飲み物を定期的に飲む習慣は、食道粘膜に負担をかけ、食道がんや食道炎のリスクを高める可能性がある。国際がん研究機関(IARC)は、65℃超の非常に熱い飲み物について「おそらく発がん性がある」と分類している。『毎日の小さな習慣が病気をつくる ヤバイ健康負債』(Dr.パンダ/あさ出版)では、こうした生活習慣を「健康負債」という視点で解説している。
熱い飲食物が食道に与える影響
食道がんの主な原因として知られているのは喫煙や飲酒だが、近年は「非常に熱い飲食物」の習慣もリスク要因として注目されている。口の中は熱さを敏感に感じるが、食道も熱すぎるものが入ると粘膜がやけど状態になる。食道は粘膜が薄く繊細なため、高温に繰り返しさらされると小さな損傷が蓄積し、炎症や細胞の損傷が生じる。
熱いものを摂取すると食道の粘膜が反復して損傷を受け、そのたびに細胞の修復・再生が繰り返される。この慢性的なダメージと再生の繰り返しが、細胞の遺伝子にエラーを起こさせやすくし、がん細胞が発生するリスクを高めると考えられている。
研究が示すリスクの実態
IARCは、伝統的に熱いお茶やマテ茶を飲む中国・トルコ・南米などの地域では、飲む温度が高いほど食道がんの発生リスクが増加したと報告。イラン北東部ゴレスタン州で約5万人を対象に行われた調査では、70℃以上の熱いお茶を飲む人は、65℃未満で飲む人に比べて食道がんリスクの指標が大きく上昇した。
中国で行われた大規模研究では、毎日とても熱いお茶を飲む習慣に加えて、15g以上のアルコールを日常的に摂取している人は、ほとんどお酒を飲まない人に比べ、食道がん発症リスクが約5倍に増加。喫煙者が毎日熱いお茶を飲む場合も、非喫煙者に比べリスクが約2倍に上昇した。
予防のための日常習慣
食道がんや食道の炎症を予防するには、熱々の状態で飲食しない習慣を身につけることが第一。飲み物は少し冷ましてから飲み、湯気がおさまってカップを触ったときにほんのり温かい程度が適温。急いでいるときは水で割る、氷を一つ入れる、ミルクを加えるなどして温度を下げる方法もある。
粘膜の健康維持には、ビタミンやポリフェノールなど抗酸化作用のある栄養素が役立つ。朝食に果物を添える、昼食に野菜の小鉢を追加する、夕食に魚や大豆製品を取り入れる、汁物にきのこや海藻を加えるといった方法で手軽に摂取できる。熱すぎる飲食物を習慣的に摂ることは、食道や胃の粘膜に余計な負担をかけるため、がんだけでなく食道炎・胃炎の予防のためにも、日頃から熱すぎる飲食を避けることが賢明である。



