「隠れビタミンC不足」が招く歯肉炎や創傷治癒遅延のリスクとは
「隠れビタミンC不足」が招く歯肉炎や創傷治癒遅延のリスク

自覚症状がなくても進行する「隠れビタミンC不足」は、歯肉炎や傷の治り遅れ、さらには壊血病のリスクにつながる可能性があります。ビタミンCの摂取量が不足しがちな現代人に向けて、1日100mgの推奨量や効果的な摂取方法を解説します。

隠れビタミンC不足とは何か

多くの哺乳動物は体内でビタミンCを合成できますが、人間はそのための酵素を持たないため自力でビタミンCをつくることができません。毎日の食事から摂取する必要がありますが、ビタミンCは水に溶けやすく体内に蓄積されにくい性質があります。さらに、現代人はビタミンCを消費しやすい生活習慣を送っているとされています。

「最近なんとなく疲れが取れない」「風邪を引きやすく治りにくい」「歯茎から血が出やすい」といった症状がある場合、それは「隠れビタミンC不足」のサインかもしれません。ここで言う「隠れビタミンC不足」とは、壊血病のような明らかな重症欠乏には至っていないものの、食事からの摂取量が不足していたり、喫煙、ストレス、偏った食生活などでビタミンCの消耗が増えたりして、体内のビタミンCが不足気味になっている状態を指します。これは正式な病名ではありませんが、本書では日常の不調につながりうる軽度~中等度のビタミンC不足として扱います。

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ビタミンCは、血管や歯茎の健康、傷の修復、抗酸化作用、免疫機能などに関わります。欠乏すると疲労感、歯肉炎、出血傾向、創傷治癒の遅れなどが見られることが知られています。特に、野菜や果物をあまり食べない人、外食や加工食品の摂取が多い人、喫煙者、仕事などで強いストレスが続いている人、高齢で食事量が少ない人では、気づかないうちにビタミンCが不足しやすくなります。喫煙者では酸化ストレスが増えるため、非喫煙者よりも1日あたり35mg多いビタミンCが必要とされています。

ただし、疲れや歯茎からの出血があるからといって、必ずしもビタミンC不足であるとは限りません。貧血、糖尿病、歯周病、睡眠不足、甲状腺疾患など別の原因が隠れていることもあります。症状が続く場合は、自己判断でサプリメントだけに頼らず、医療機関で原因を確認することが大切です。

歯肉炎と創傷治癒遅延のリスク

ビタミンCが不足すると特にあらわれやすい問題が、歯茎の炎症(歯肉炎)と傷の治りの遅さ(創傷治癒遅延)です。その理由は、ビタミンCがコラーゲン生成に不可欠な栄養素だからです。コラーゲンは体のあらゆる組織を支えるタンパク質で、皮膚、血管、骨、腱、そして歯茎の真皮や歯を支える歯周組織にも存在しています。

ビタミンCが十分にないとコラーゲンの合成が滞り、新しい組織がうまくつくられません。その結果、血管や粘膜がもろくなり出血しやすくなります。実際、コラーゲン不足で歯茎の組織が弱くなると、歯垢(プラーク)による刺激に対する抵抗力も低下し、歯肉炎や歯周炎が起こりやすくなります。

ビタミンC摂取量や血中ビタミンC濃度が低い人では、歯周病のリスクや進行と関連することが、複数の研究をまとめたシステマティックレビューで報告されています。また、歯肉炎の患者にビタミンC補充を行った臨床試験では、歯茎からの出血や炎症が軽減したという報告もあります。

傷の治りの遅さもコラーゲン不足が関係しています。ビタミンC不足だと体に傷ができても、コラーゲンを使って新しい皮膚や血管をつくり傷口をふさぐ作業が遅れ、傷の治りが悪くなってしまうのです。擦り傷や手術後の傷がいつまでもふさがらないといったことが実際にあります。

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大人になると傷の治りが遅くなる、と感じる人もいるでしょう。これは加齢によって皮膚の再生力や血流、炎症反応、持病の影響などが変化するためでもあります。ただし、ビタミンC不足が重なると、コラーゲン合成がさらに滞り、傷の修復が遅れやすくなります。特に高齢者、食事量が少ない人、喫煙者、糖尿病などで傷が治りにくい人は、日頃からビタミンCを含む食品を意識して摂ることが大切です。

欠乏が進むと壊血病のリスクも

ビタミンC不足から欠乏へと移行すると、体はどのような状態になるのでしょうか。歴史的にも、長期間航海に出ていた船乗りたちが壊血病に苦しみ、多くの命が失われた記録があります。壊血病とは、ビタミンCが極端に不足することで、コラーゲンを十分につくれなくなり、全身の血管、皮膚、歯茎、骨、関節などが弱くなる病気です。

初期には、強い疲労感、食欲低下、関節痛、筋肉痛、歯茎の腫れや出血などが見られます。進行すると、皮膚に紫色の出血斑が出る、傷が治りにくくなる、歯がぐらつく、貧血が起こる、感染症に弱くなるといった症状があらわれます。さらに重症化すると、全身の出血や衰弱が進み、治療しなければ命に関わることもあります。

壊血病が怖いのは、単に「歯茎から血が出る病気」ではない点です。ビタミンCが不足すると、血管を支えるコラーゲンがつくれなくなるため、毛細血管が破れやすくなります。皮膚の下で出血が起きれば紫斑やあざとなり、これが歯茎で起これば歯肉出血となります。傷口では新しい組織がつくれず、治りが遅れます。つまり、体の修復システムそのものが弱ってしまうのです。

現代では壊血病になるほど極端なビタミンC不足は稀で、そこまで至らなくとも「隠れビタミンC不足」になることが多いです。特に高齢の方やひとり暮らしの方で、「調理が面倒であまり野菜や果物を買っていない」という場合は要注意です。食欲低下や買い物の困難さから野菜不足になり、気づかぬうちにビタミンC不足状態に陥るケースが見られます。

1日100mgが推奨、効果的な摂取方法

ビタミンCは、皮膚・骨・結合組織の発達や修復、血管の機能維持、歯や歯茎の健康などに必要な栄養素です。鉄分の吸収を助けたり、抗酸化作用によって細胞を酸化ストレスから保護したりする役割もあります。日本人の食事摂取基準では、成人のビタミンCの推奨量は1日100mgと定められています。これは、例えばオレンジ1個程度、キウイフルーツ1〜2個程度に相当する量です。

ただし、ビタミンCは水溶性ビタミンのため、体内に大量に蓄えておくことができません。余った分は尿として排出されるため、まとめて大量に摂るよりも、毎日の食事でこまめに摂ることが大切です。

ビタミンCはほかの栄養素と組み合わせることで相乗効果を発揮することがあります。特によく知られているのが鉄分との組み合わせです。ビタミンCは小腸での鉄の吸収を高める作用があり、鉄不足の予防に役立ちます。例えば、鉄分を含む食品(レバーや赤身の肉、ほうれん草など)と一緒にビタミンCが豊富な食品(ピーマンや柑橘類など)を摂ると効率的です。レモンを絞ったほうれん草のおひたし、野菜とお肉の炒め物+デザートにキウイフルーツ、といった組み合わせを意識してみましょう。

スープや煮物は汁ごと摂取するのがおすすめです。加熱が必要な場合も、茹ですぎず短時間の加熱にとどめたり、蒸す・炒めるなど水に流出させない調理法を選ぶとビタミンCの損失を減らせます。一般的なビタミンCサプリメントには1日分で500~1000mg程度含まれているものが多く、野菜や果物が不足しがちな方の補助となります。ただし、極端な過剰摂取(1日2g以上を継続など)は禁物です。サプリメントに頼りすぎるとほかの栄養素や食物繊維が不足しがちになるため、あくまで補助的に用い、基本は食事から摂取するのが望ましいです。

ビタミンC不足は、高尿酸血症や痛風リスクとも関連します。尿酸は体内の老廃物ですが、ビタミンCには尿酸を尿中に排出しやすくする作用があると考えられています。そのため、ビタミンC摂取量が少ないと尿酸値が高くなりやすく、痛風リスクに関わる可能性があります。実際、男性を長期間追跡した研究では、ビタミンC摂取量が多い人ほど、痛風の発症リスクが低いことが報告されています。また、複数の研究結果をまとめて分析した報告では、ビタミンCを補うことで、血液中の尿酸値がやや下がる可能性も示されています。ただし、ビタミンCは痛風の治療薬ではありません。痛風や高尿酸血症がある人が、ビタミンCサプリメントだけで治そうとするのは不適切です。尿酸値が高い人、痛風発作を起こしたことがある人、腎臓病がある人は、食事療法の一部としてビタミンCを意識しつつ、医師の指導のもとで治療を受けることが大切です。