健康診断や人間ドックで「便潜血陰性」と聞くと、多くの人はひとまず安心するかもしれない。便潜血検査は大腸がんの可能性がある人を絞り込む重要な検査だが、陰性だからといって完全に大腸がんを否定できるわけではない。本記事では、便潜血検査の正しい位置づけと、陰性でも注意すべきケースについて医師が解説する。
便潜血検査とは何か
便潜血検査は、便に含まれる肉眼では確認できない微量の血液を検出する検査である。陽性の場合、大腸などの消化管から出血が起きている可能性があり、大腸がんやポリープ(多くは良性だが一部はがん化する)が原因として考えられる。ただし、大腸がんやポリープがあっても必ず陽性になるとは限らない。
健康診断や人間ドックでは、無症状の人の中から異常の可能性がある人を抽出するため、一次検査(スクリーニング)として簡便な便潜血検査を行い、陽性者に二次検査(精密検査)として大腸内視鏡検査を実施するのが一般的だ。大腸内視鏡検査では医師が直接大腸内部を観察するため、がんやポリープの見逃しが少なく、小さなポリープは検査中に切除できる利点がある。
陰性でも安心できない理由
便潜血陰性でも完全に安心できない理由は複数ある。第一に、大腸がんがあっても出血が起きていない、または出血がごく少量で検出できないケースがある。第二に、便の採取方法が不適切な場合だ。正しい採取方法は便の表面を擦り取ることであり、内部を掘り出すのは誤り。また、採取は別の日に2回行い、冷暗所(冷蔵庫が望ましい)で保管し、2回目採取後できるだけ早く提出する必要がある。
報告によって差があるが、進行大腸がんがある場合、1回採取での陽性率は約70%、2回採取でいずれかが陽性となる確率は約90%とされる。つまり、2回採取の一次検査でも約10%の確率で大腸がんが見逃される可能性があると推測されている。一宮西病院 消化器内科部長の東玲治先生は「進行がんでも陽性率は約70%程度。たまたま採取した便に血液が混入していなかったり、採取や保存に問題があった場合に偽陰性となる」と説明する。また、右側の大腸がんは直腸がんやS状結腸がんよりも便潜血検査が陰性になりやすいと報告されている。
陰性でも注意すべきサイン
便潜血が陰性でも、次のような症状がある場合は翌年の検診を待たずに受診すべきだ。便が細くなる、血液が混ざる、便秘と下痢を繰り返す、排便習慣の変化(例:頑固な便秘)、腹部膨満感、腹痛、吐き気、食欲低下、貧血、体重減少など。これらの症状は大腸がんの可能性を示唆する。
また、大腸がんのリスク因子として、血縁者に大腸がん患者がいる場合、潰瘍性大腸炎などの大腸疾患、赤身肉や加工肉の多摂取、食物繊維不足、運動不足などが挙げられる。東先生は「便潜血検査が陰性でも、便が細くなる、体重減少、貧血症状(めまい、ふらつき、動悸)、排便前の腹痛、血便などが続く場合は医療機関を受診してほしい」と述べている。
検査結果の正しい受け取り方
便潜血検査は多くの人から大腸がんリスクの高い人を選び出すためのスクリーニング検査であり、陽性でもすべてが大腸がんとは限らない。一方、大腸内視鏡検査は個々人を精密に調べ、がんの有無を確認する。この違いを理解し、検診を適切に活用することが重要だ。一次検査で陽性なら必ず二次検査を受けるべきであり、検診で発見される大腸がんは比較的早期で治癒が期待できる。東先生は「便潜血検査を毎年受けることで、手遅れになる前に大腸がんを発見できる可能性を高められる」と強調する。



