東京女子医科大学病院リハビリテーション科教授・基幹分野長の若林秀隆氏は、著書『幸福寿命』(日刊現代)の中で、1日わずか2分の「プチ筋トレ」が全身の老化防止に効果的だと提唱している。同氏は、健康寿命と幸福寿命を延ばすために最も重要な習慣は運動であると断言する。
運動がもたらす身体的・精神的効果
若林教授によれば、厚生労働省が2023年に策定した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、身体活動・運動量の多い人は循環器病、2型糖尿病、がん、ロコモティブシンドローム、うつ病、認知症などの発症・罹患リスクが低く、うつや不安の症状が軽減され、思考力、学習力、総合的な幸福感が高まるとされている。身体活動とは、安静時よりも多くのエネルギーを消費する骨格筋の収縮を伴うすべての活動を指し、運動はそのうち計画的・定期的に行われるものを意味する。
さらに、2024年に一流医学雑誌「BMJ」に掲載された研究では、うつに対する運動の効果が検証され、歩行、ジョギング、ヨガ、筋力トレーニングが特に効果的であることが示された。同研究は、運動をうつの主要治療法として心理療法や抗うつ薬と並べて検討すべきだと提言している(Noetel M, et al. BMJ 2024)。また、うつの認知機能に対する運動の効果を調べた研究では、運動が全体的な認知機能、処理速度、注意、記憶、遂行機能を改善することが確認されている(Ren FF, et al. Int J Nurs Stud 2025)。
精神疾患への幅広い効果
中程度から高度の有酸素運動は、うつ病だけでなく、社会恐怖症、パニック症、全般性不安症、心的外傷後ストレス症、短期精神症、統合失調症、統合失調感情症、妄想症、統合失調症様症、注意欠陥・多動症、神経発達症など様々な精神疾患への効果も認められている(Solmi M et al. J Psychiatr Res 2025)。若林教授は、このように運動が精神心理面の健康と治療に効果的であることから、幸福寿命を延ばす最強の方法だと強調する。
忙しい人でも始めやすい「プチ筋トレ」
「運動を続けられない」という人も多いが、若林教授は「1日1分の筋トレかストレッチでもよい」とアドバイスする。もし1日1分の運動もできないほど忙しいなら、幸福寿命を延ばすために生活全般の見直しが必要だと指摘。同氏自身が実践するオリジナルの「プチ筋トレ」は、わずか2分で全身の筋肉を刺激し、加齢による筋力低下(サルコペニア)やロコモティブシンドロームを予防する効果が期待できるという。
予防・改善の基本は「運動」と「栄養」
若林教授は、ロコモ予防・改善には「1に運動、2に栄養」が基本であり、特に継続が最も重要だと述べている。ペットボトルのふたが開けにくいなどの症状は筋力低下のサインであり、若い人でもロコモを発症する危険性があるため、早期からの対策が必要だと警告する。



