「ビジュいい」はルッキズム?前川裕奈さんが語る外見との向き合い方
「ビジュいい」はルッキズム?前川裕奈さんが語る外見との向き合い方

社会起業家で文筆家の前川裕奈さんが、ルッキズム(外見至上主義)を題材にした著書「つまり、それがルッキズム ~23の事例と解説~」(講談社)を出版した。前川さんはかつて自身も「ルッキズム沼」にはまっていたといい、沼から抜け出すまでの道のりや、ルッキズムの問題を発信する理由を語った。

「デブスパッツ」というあだ名から始まったコンプレックス

前川さんが「ルッキズム沼」にはまり始めたのは小学校5年生の頃。体重は標準より少し上回る程度だったが、体形コンプレックスがあったという。幼少期をヨーロッパで過ごし、帰国後に現地のスタイルで学校へ行ったところ、「デブスパッツ」というあだ名が付けられた。

その後も「自分は一生『デブスパッツ』なんだ」と思い込み、次第に「ダメな人間」の代名詞となっていった。大学生になっても「裕奈は顔がいいんだから、体が追いつけば最高だよ」などと言われ続け、「私は人より欠けているから、人より劣っている人間だ」という思いがつきまとっていた。

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スリランカでの暮らしが救いに

大学院卒業後、JICA(国際協力機構)に就職し、出張で訪れたスリランカのポテンシャルに魅了された前川さん。外務省に転職してスリランカに移り住んだ。現地では日本の広告やメディアから物理的距離を置くことができ、スリランカの友達との会話にも助けられ、ルッキズムの悩みから離れられたという。

2019年には、セルフラブをテーマにしたフィットネスウェアブランド「kelluna.(ケルナ)」をスリランカで起業。「運動は痩せるため」という認識が強かった日本に対し、運動には心が健やかになったり仲間作りができたりと、もっとプラスの面があることを伝えたいと語る。

ルッキズムとは何か、そして「ビジュいい」は?

前川さんはルッキズムについて、「人の見た目に触れることがダメだ」ということではなく、触れることによって誰かが不当な扱いを受けたり、傷ついたり、差別が生まれたり、画一的な美の定義に加担したりしてしまうことだと定義する。

日常的に起こり得る例として、良かれと思って「美人だからいいじゃん」と言ってしまうことを挙げる。褒めたつもりの言葉は、受け取った側が「やめてよ」と言いづらい。褒めるなら「雰囲気が素敵だね」のように、その人の存在や思考を褒める伝え方があると提案する。

自身の推しである声優の蒼井翔太さんについては、「顔が美しい」と言われることも多いが、「蒼井さんの顔タイプ以外の男性はだめ」などとは一度も言っていないとし、誰にも強要せず自分で勝手に完結しているため、ルッキズムではないと語る。オタク同士で「ビジュ良い」と言い合うのは「オタクのあいさつみたいなもの」で、自分の推しのビジュアルを自分が勝手に崇めている分には問題ないと述べた。

子どもの外見の悩みに対しては、まず「そう思っているんだね」と受けとめ、なぜ「嫌だ」と思うのかを一緒に考えたいと話す。

著書で伝えたかったことについては、「ルッキズムに悩んでいる人には『一人じゃないよ』と伝えたいし、全ての人に『一緒に世の中を変えていこうよ』と伝えたい」と語る。外見や「らしさ」に悩むのはルッキズムを生み出している社会のせいで、自責する必要はないが、そんな社会を作っているのも私たちであり、変えることもできる。「小さな声でも集まれば、やがて大きな変化になると信じています」と締めくくった。

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