米国時間の6月2日、超党派の議員たちにより、ビジュアルアーティストの権利を保護する新たな法案「CREATOR法」(Creative Rights Ensuring Artists' Technique and Originality Are Reserved Act)が連邦議会に提出された。Adobeがこの法案への支持を表明したことで、様々なメディアで報じられている。
背景:生成AIと著作権の課題
近年、AIと著作権に関する議論が加熱している。日米ともに現行の著作権法では、アイデアや作品・画風といった、著作物そのものではない部分については著作物性がないとされ、保護の対象外となっている。
しかし生成AIは、個性的なアーティストの作品を学習し、類似したテイストの作品を作り出すことが可能になっている。作品には小説や文章、音楽、映像などの動画作品も存在するが、一番分かりやすいのは絵画やイラスト、写真などのビジュアルだろう。
こうしたビジュアルの「作品」にも保護されるべき権利があるはずとして、新たな権利を定義するのがCREATOR法案である。これは著作権および商標権とは異なる、別の連邦知的財産権と定義されている。
法案の内容
スタイルの範囲に対する権利
まずは法案で対象となっている著作物を確認しておく。法案内の定義では「ビジュアルワーク」として、イラスト、写真、グラフィックデザイン、絵画、ドローイングなどの静的な視覚画像に限定され、映像や音声作品は含まれないと記載されている。
次に作品範囲が規制される手段範囲を読み込んでいく。規制対象となるのは、あくまでも「意図的な」スタイルの範囲であり、商業利用である場合に限られる。
またアイデア、コンセプト、ジャンル、芸術運動、一般的に使用される視覚スタイルや芸術手法には及ばないとしている。加えて一般的な芸術的影響、個人の創作、または本質的ではないAIの補助を禁止するものではないとする。
この「作品」という権利は、書面による契約により、全部または一部を排他的に譲渡またはライセンスできるとしている。このあたりは米国の著作権法に近い形である。
権利の存続期間は、クリエイターが存命している期間と、死後10年間。死後の権利に関しては、5年ごとに最大50年まで更新可能となっている。
AIシステムへの責任事項
一般的なAIシステムの開発・提供は、特定芸術家の範囲を意図的に設定・伝送しない限り責任を問われない。また単にシステムが、特定芸術家の特徴的な視覚的特徴に似た出力を生成できるというだけでは、責任は生じないとしている。
また作品を提供する側の責任事項としては、オンラインとオフラインに分けている。オンラインサービス以外の者は、作品が本法の定義する特定芸術家のスタイル範囲であることを知っていた、または故意に確認を避けた場合のみ、責任を負う。オンラインサービスは、通知や申し立て命令後に速やかに対応しなかった場合のみ、責任を負う。
「AIによる範囲」に限らない
この法案は、AIによる生成に限らず、人間が意図的にスタイルを模倣する場合も対象となる。つまり、アーティストのスタイルを無断で商業利用する行為全般を規制しようとするものだ。
法案の行方次第では、生成AIサービスに対する影響も大きい。特に、特定のアーティストのスタイルを指定して画像を生成する機能を持つサービスは、規制の対象となる可能性がある。
一方、Adobeは自社のAIサービス「Firefly」において、アーティストのスタイル学習に関する透明性を高める取り組みを進めており、この法案の理念に合致するとしている。



