11月の米中間選挙で東部メーン州の連邦上院選に民主党公認候補として出馬予定だった新人グラハム・プラトナー氏(41)が8日、レイプ疑惑を受けて選挙戦からの撤退を表明した。プラトナー氏はスキャンダルまみれで、民主党主流派を公然と批判して台頭したことからドナルド・トランプ大統領になぞらえられていた。
撤退表明の経緯
プラトナー氏はX(旧ツイッター)に投稿した動画で「選挙運動を停止する」「これは非常に難しい決断だ。なぜなら、一部の人々がこれを疑惑を認めたと判断することが分かっているからだ。だが、それは断じて違う」と述べ、「撤退のための書類を提出するつもりだ」と付け加えた。
メーン州法に基づき、プラトナー氏が7月13日の期限前に撤退したため、民主党は公認候補を差し替えることができる。民主党メーン州支部は、7月27日までに新たな候補を選出しなければならない。
疑惑の発端
ニュースサイトのポリティコが6日、プラトナー氏が2021年後半に当時交際していたメーン州在住のジェニー・ラスコーさん(41)に対し、繰り返し拒否されたにもかかわらず無理やり性行為に及んだと報道した。これに対しプラトナー氏は、レイプ疑惑を「事実無根だ」と強く否定した。
しかし、プラトナー氏陣営は、民主党主流派から、以前は同氏を支持していたプログレッシブ(進歩派)と呼ばれる急進左派の議員や活動家に至るまで、民主党全体からの支持を急速に失った。民主党のチャック・シューマー上院院内総務と上院選挙対策委員会のキアステン・ジリブランド委員長はプラトナー氏に撤退を促し、プラトナー氏が選挙戦を継続する場合、党として資金支援をしないと警告した。
プラトナー氏の主張
プラトナー氏はXに投稿した動画で「レイプ疑惑のせいではなく、権力者によって活動基盤が奪われているから撤退するのだ」と語った。同氏を支持していた複数の上院議員や民主党メーン州支部もプラトナー氏に撤退を強く求めた。
同氏はわずか数週間前には民主党主流派を公然と批判する姿勢が、民主党政治にうんざりした有権者に響き、支持者から歓迎されていたが、一気に支持を失った。
熱狂的な支持層
プラトナー氏は、現職の共和党スーザン・コリンズ上院議員を一般市民ではなく大企業や献金で政治を動かす富裕層に奉仕していると批判し、メーン州で熱狂的な支持層を築き上げた。同氏は、カリスマ性、主流派政治を軽視する姿勢、そして多くの有権者が腐敗し疲弊しているとみなす体制を打破するという公約から、トランプ氏の破壊的な台頭になぞらえられた。
だが、支持者を熱狂させたこれらの資質は、プラトナー氏の個人的な問題が勝てるはずの選挙戦を台無しにするのではないかと民主党員を不安にさせてもいた。
過去の問題
プラトナー氏陣営は今回のレイプ疑惑が浮上する前から、過去の過激なSNS投稿、結婚初期に妻以外の女性たちに送った過激な性的メッセージ、後に隠したナチス・ドイツのシンボルに似たタトゥー、さらには女性を不当に扱ったという疑惑に悩まされてきた。プラトナー氏は過去に未診断のPTSD(心因性外傷後ストレス障害)やアルコール依存症に苦しんでいたことを認めているが、元パートナーたちに身体的な危害を加えた疑惑については否定している。
民主党への影響
上院は共和党53、民主党系47となっており、過半数奪還を目指す民主党にとってメーン州は重点選挙区の一つだったが、プラトナー氏の撤退により、民主党は政治的に困難な後任選考プロセスに直面している。急進左派がすでにプラトナー氏の運動と政策課題を継承できる候補者を擁立するよう動いている一方、党指導部は、共和党のコリンズ氏が過去に何度も厳しい選挙戦を生き残ってきたメーン州において、民主党穏健派や無党派層、女性有権者を安心させられる人物を選ぶ圧力にさらされている。
コリンズ氏は5期目で、議会に残る数少ない共和党穏健派の一人だ。民主党にとっては中間選挙で倒すべき最優先の標的の一人だが、プラトナー氏をめぐる混乱はコリンズ氏陣営に猶予を与え、候補者の適性審査、ポピュリズム、そして選挙での勝利可能性をめぐる民主党内の分断を浮き彫りにした。



