政府は、安全保障3文書の改定に合わせ、防衛産業を抜本的に強化するための「防衛産業基盤戦略」を年内に策定する方針を固めた。人工知能(AI)などのデュアルユース(軍民両用)技術に関わる産業の育成策を盛り込み、防衛産業を一体的に支援する法人の新設も明記する。複数の政府関係者が明らかにした。
「防衛と経済の好循環」の実現目指す
防衛産業の成長で有事の生産能力を確保しつつ、経済も活性化させる「防衛と経済の好循環」の実現を図る。抑止力を高めるには、AIや無人機を多用する「新しい戦い方」への対応や、有事における持続的な生産能力の確保が不可欠で、防衛産業が担う重要性は増している。戦略策定により、政府全体で防衛産業の変革に取り組むことを明確にする。
ウクライナの継戦能力が抑止力に
ロシアから侵略を受けたウクライナは、外国からの物資供与に加え、国内で無人機や弾薬などの増産体制を築き、4年半超にわたり戦闘を続けている。こうした継戦能力を持つことは、他国に侵略を思いとどまらせる抑止力になる。
戦略では具体策として、防衛、経済産業両省が連携し、軍民両用技術を持つ産業の育成に取り組む方針を打ち出す。AIに加え、航空・宇宙、半導体、バイオ・医療などを想定する。経産省が持つ産業育成や中小企業支援のノウハウを活用した産業政策を防衛分野で展開する計画だ。
新法人の設立と輸出支援
政府が継続的に調達を続けることで、新興企業の成長を後押しする施策の導入も盛り込む見通しだ。独立行政法人を想定する新法人には、防衛装備品の輸出支援、新興企業の育成を含む防衛産業の基盤強化、技術革新の促進などを担わせる。来年の通常国会に設立のための新法を提出し、同年10月に約300人体制で発足させ、5年後に約600人体制にする方向だ。
輸出支援では、輸出先の開拓や契約手続き、輸出後の整備・訓練の提供などを想定する。新法人は、国が装備品の生産施設を保有し、民間に運営を任せる「国有施設民間操業(GOCO)」にも取り組む。有事に増産ができる体制を整備する狙いがある。政府は、市場の小ささや収益性の低さから撤退や事業縮小が相次ぐ防衛産業を成長分野に変え、防衛力の土台としたい考えだ。