「段畑」石積み守りコツコツ 元協力隊の亀井さん、講座や研修で1000人指導
「段畑」石積み守りコツコツ 元協力隊の亀井さん、1000人指導

愛媛県西予市明浜町・狩江地区の急傾斜に広がる段畑。この古くからの農業技術を守る「石積み修繕士」を名乗る亀井彩香さん(28)が、8月31日で市地域おこし協力隊員の任期を終えた。今後も地区で活動を続け、「石積み保全の仕組みを確立したい」と意気込む。

石積みの技術を次世代へ

6月下旬、宇和島市内のミカン畑で石積み修繕の講座が開かれ、参加した地元の農家らに、講師の亀井さんが「もう少し斜めに石を積み上げた方が、バランスがいい」などと細かく助言した。参加者は、様々な大きさの石をパズルのように組み合わせ、斜面に壁面をつくる作業に汗を流した。

就農に向けて研修中の森岡瞭太さん(24)は「石積みは『元からあるもの』との印象があり、『直す』ことを考えたことはなかった。よい経験になった」と話した。

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重要文化的景観の保全

狩江地区は宇和海に面したリアス式海岸にあり、近世以降にいわし漁や養蚕業で栄え、人口の増加とともに山の急傾斜に段畑が形成された。灰白色の石垣が幾重にも重なり、ミカンの木で彩られる眺望は、「宇和海狩浜の段畑と農漁村景観」として国の重要文化的景観(2019年選定)などに選ばれた。

一方、石積みは傷みが目立つが、住民の高齢化で修繕に手が回らず、景観の保全が危ぶまれた。そこで、西予市の委託を受けた地域づくり組織「かりとりもさくの会」が、石積みを守る専門の地域おこし協力隊員を募ることにした。

1000人以上を指導

亀井さんは鹿児島県出身。大学卒業後、宮崎県の広告会社に就職したが、コロナ禍で退職。環境を変えようと松山市内の妹宅に下宿した際、ミカン収穫のアルバイトで狩江地区を訪れた。バイト先の農家に勧められて参加した石積みの講座で「きちんと積めば300年もつとされる。石の癖を生かし、いかに壁面を完成させられるかが面白い」と魅力にはまった。

2022年9月に石積み修繕士として採用され、県外の専門家らに修繕方法を学んだ後、地区で石積みの手入れを担ってきた。これまでに講座や研修を約140回開き、1000人以上を指導。修学旅行生や社外研修の会社員、外国人観光客らが参加し、「この景色の中で汗を流せるのがいい」「自分が積んだ石積みが何百年続くと思うと感慨深い」と反響が寄せられる。

明浜町で観光ガイドを務める佐藤文明さん(68)は「亀井さんの活動が広まることで、地元の農家や若者もやる気になり、段畑の価値を認識してもらえる」と期待する。

持続可能な保全の仕組みへ

亀井さんはこの地で結婚し、子どもも生まれた。石積み修繕士としては、まだやり残したこともあるという。「持続可能な石積み保全の仕組み」は実現したいことの一つで、修繕はボランティアで行われるが、集金サイクルを確立し、石の購入費や技術向上の研修費、ボランティアの交通費にあてる仕組みを構想する。

「石積みを通じ、子どもたちが夢を見続けられる地域、活気ある地域にしたい」。アイデア、意欲は尽きず、これからも狩江地区で石を積み続けるつもりだ。

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