会議で「何かアイデアは?」と質問しても、参加者がうつむいて沈黙してしまう――そんな経験はないだろうか。東京大学大学院情報学環客員研究員でMIMIGURI代表取締役Co-CEOの安斎勇樹氏は、こうした事態を回避するには、比喩法や擬人法といったレトリック(修辞技法)を駆使した問いかけが効果的だと指摘する。安斎氏の著書『新 問いかけの作法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)から、その具体的な方法を紹介する。
比喩法:別のものにたとえてイメージを広げる
比喩法は、伝えたい内容を別の何かにたとえることで、理解を促進し、イメージを膨らませるテクニックだ。「まるで~のようだ」と明示する直喩や、「恋は盲目」のように暗に示す隠喩などがある。例えば、「この会社で、あなたはどんなふうに働きたい?」という質問を考えてみよう。これを「この会社という舞台で、あなたはどんなパフォーマンスをしたい?」とアレンジすると、会社を「人材の活躍の場」と捉えたニュアンスが伝わる。あるいは「この会社という船で、あなたはどんな航海をしたい?」とすれば、不確実な環境を共に乗り越える意志を問うことができる。質問の意図や伝えたいニュアンスに応じて、同じ性質を持つ別のものを借りてくるのが比喩法の基本だ。
擬人法:人間でないものを人間に見立てる
擬人法は、人間でないものに人間らしい感情や動作を与える技法で、比喩法の一種でもある。例えば、「もしあなたが社長だったら、この使われていない自社技術をどう活用しますか?」という質問。これに擬人法を加えて「もしあなたが社長だったら、この泣いている自社技術をどう活用しますか?」とすると、「なんとかしてあげたい」という感情が湧きやすくなる。さらに「すっかり自信をなくした寂しそうな自社技術」や「『もっと俺を活かせ!』と叫ぶ自社技術」とすれば、キャラクターが立ち、チャレンジングな発想が生まれやすくなる。質問に感情が込められ、回答者の共感を誘う効果がある。
共感覚法:五感を刺激する表現で印象を強くする
共感覚法は、ある感覚を別の感覚で表現する技法だ。例えば、「このプロジェクトの現状をどう思う?」という質問に「このプロジェクトの現状はどんな色?」と五感を交えると、視覚的なイメージが加わり、回答が具体化しやすくなる。音や感触、香りなど、五感に関わる言葉を加えることで、質問の印象が強まり、相手の思考を活性化させる。
声喩法(オノマトペ):音や様子を言葉で表現
声喩法は、オノマトペ(擬音語・擬態語)を加える技法だ。「このチームの雰囲気はどう?」という質問に「このチームの雰囲気は、ガヤガヤしている?それともシーンと静まり返っている?」と加えると、具体的な情景が浮かびやすくなる。オノマトペは直感的に伝わるため、回答者の感情や状況を引き出しやすくする効果がある。
緩叙法:二重否定で控えめに表現
緩叙法は、二重否定を使って控えめに表現する技法だ。「この企画はどう?」という質問に「この企画は、悪くないと思わない?」とすると、相手が否定しにくくなり、本音を引き出しやすくなる。直接的な否定を避けることで、回答者の心理的抵抗を和らげ、建設的な意見を促す。
婉曲法:オブラートに包んで間接的に伝える
婉曲法は、直接的な表現を避けて遠回しに伝える技法だ。例えば、「あなたの仕事の進め方に問題がある」と言う代わりに「もう少し効率的な方法はないかな?」と問いかける。これにより、相手を責める印象を与えずに、改善点に気づかせることができる。会議での批判的なフィードバックにも有効だ。
安斎氏は、これらのレトリックを状況に応じて使い分けることで、沈黙がちな会議を活性化し、質の高い回答を引き出せると述べている。単に「何か意見は?」と問うのではなく、比喩や擬人法を駆使した「最初の一言」が、参加者の思考を解き放つカギとなる。



