休むことの重要性を頭では理解していても、実際に休むのは難しいと感じる人は多い。東京大学大学院特任研究員で臨床心理士の関屋裕希氏は、そのギャップを解消するために「先に行動してしまう」ことを提案する。自身も元ワーカホリックだったという関屋氏は、強制的に休む行動実験を通じて、徐々に休息の価値を再評価し、心身のバランスを取り戻す方法を著書『仕事が終わらないのはだれのせい? 自分に優しい時間の使い方』(日経BP)で紹介している。
行動を変えることで認識を変える「食わず嫌いの法則」
関屋氏は、休むことの難しさに対して「認識を変えてから行動する」従来のアプローチではなく、「まず行動を変える」方法を推奨する。これを「食わず嫌いの法則」と名付け、ピーマンが苦手な人がうっかり食べてみたら美味しく感じ、その後自ら進んで食べるようになる例を挙げている。休むことも同様で、強制的に休む行動を繰り返すことで、休むことへの抵抗感が薄れ、その心地よさを実感できるようになるという。
関屋氏自身、大学院時代に昼夜問わず研究に没頭し、ワーカホリックだった。就職後も夜中まで研究室にいないと落ち着かず、休日に仕事をしないと罪悪感を覚えたという。しかし、強制的に休む行動を取り入れ続けた結果、徐々に仕事から心理的に距離を置き、リラックスする時間の価値を再発見した。
具体的な行動実験の方法
関屋氏は、休むための具体的な方法として「1カ月または2週間のチャレンジ」を提案する。これは、毎日決まった時間に強制的に休む時間を設け、その間は仕事やデジタル機器から完全に離れるというもの。例えば、就寝前の30分を読書や瞑想にあてる、週末の半日を予定を入れずに過ごすなど、自分に合った形で実践する。重要なのは「完璧を求めず、まずは試してみること」だと関屋氏は強調する。
このチャレンジを通じて、多くの人が「実は結構張りつめていたな」と気づくという。休むことで初めて、自分の疲労や緊張の度合いを客観視できるようになるのだ。また、周囲の人を積極的に「休ませる」ことも効果的だ。同僚や家族に休むことを促すことで、自分自身も休みやすくなる環境が整う。
休むことの効果とその先
関屋氏は、強制的な休息によって「休んでいる以外の時間」の質が変わると指摘する。適切に休むことで、仕事中の集中力や創造性が向上し、結果的に生産性が高まる。さらに、心身の健康維持にもつながり、長期的なパフォーマンスの向上が期待できる。
「休むことは決して怠けることではなく、自分自身を大切にするための重要なスキルです。まずは小さな一歩から始めてみてください」と関屋氏は語る。行動実験を通じて、自分に優しい時間の使い方を身につけることが、より充実した人生への第一歩となるだろう。



