高市早苗首相(自民党総裁)の政治的カラーを色濃く反映した法案が、今国会で続々と成立しようとしている。首相が日本維新の会と交わした連立政権合意書に従い、党内議論の取りまとめを担ったのが、自民党の政務調査会(政調)だ。小林鷹之会長(51)を中心に「合意履行」に向けて忠実に動く姿には、将来を見据えた思惑も透ける。
連立合意を粛々と履行する「チームコバタカ」
「連立合意の約束を前に進めるために愚直にやっている。結果を出しているので、首相との信頼関係はあるはずだ」。7日に国会が正常化し、審議中の法案の成立のめどが立つなか、小林氏は周囲にこう漏らした。
連立合意に従い、首相の「肝いり」政策が国会で成立しようとしている。党内の取りまとめのほか、維新や野党との修正協議を担ってきたのが、「チームコバタカ」と呼ばれる政調メンバーだ。その一人が当選3回の鈴木英敬衆院議員(51)。国旗損壊処罰法案のプロジェクトチーム(PT)の事務局長として法案づくりや党内調整、野党との交渉を担った。過去2回の総裁選で小林氏を支えた腹心の一人だ。
鈴木氏は自らの役回りについて、維新との合意項目を着々と進める「合意履行係長」だと周囲に語る。表現の自由を侵すとの懸念の声が出たが、「留意する」との文言を入れるにとどめ、首相の意向に沿う形で法案をまとめた。最後まで反対する議員はいたが、鈴木氏をはじめ、PT幹部らは意に介さなかった。
法案を「違憲立法」と断じていた国民民主党との交渉では、求めに応じてSNSをめぐる規定を削除。賛成を取り付けた。粛々と、そして着々と、連立合意に沿って進める。そうした姿勢が「チームコバタカ」には一貫している。少数の幹部で決めた方針をもとに議論を進め、党内や世論の反発を最小限に抑える。
首相肝いりのインテリジェンス強化も推進
首相が重視する、政府の意思決定を支えるインテリジェンス(情報収集・分析)機能の強化政策もその一つだ。連立合意書には「インテリジェンス・スパイ防止関連法制」と明記され、政府は来年の通常国会への提出をめざす。小林氏はまず2月時点で「スパイ防止法」の呼称を「使わないようにしている」と語り、「カウンターインテリジェンス(防諜)」と呼び始めた。小林氏の周辺は「スパイ防止法というと思想統制を連想する人がいる」と明かす。自民政権は2015年に成立させた安全保障法制も「平和安全法制」と呼称し、世論の受け入れを図った経緯がある。
戦略本部のトップは小林氏が務める。実務能力の高さに評価がある一方、「官邸に唯々諾々」との声も聞かれる。
「チームコバタカ」の党内評価と将来の思惑
東京大学大学院教授で地経学研究所長の鈴木一人氏は、次のように指摘する。「小林政調会長と彼のチームは、年齢的にも若く、まだこの先がある。興味深いのは、高市首相の次を狙う小林政調会長が、首相との違いを示すよりも、忠実に党の政策をまとめるということで存在感を示しているという点。幹事長を超える存在感となっていて、すでに次期総裁候補としての地位を固めつつある」。
党内では、小林氏の手腕を評価する声がある一方、「官邸の意向にただ従っているだけ」との批判も根強い。しかし、連立合意の着実な履行は、首相との信頼関係を強化し、将来の首相候補としての基盤を築く戦略とみられる。
「チームコバタカ」の動きは、今後の自民党内の権力闘争や政策形成にも大きな影響を与えるだろう。



