「力こそ正義」の世界回帰を防ぐには…日本に必要な戦略的自律とは 垂秀夫氏が提言
「力こそ正義」回帰防ぐには…日本に必要な戦略的自律とは

トランプ米大統領の訪中からわずか4日後、プーチン露大統領が北京を訪れ、そこで発表された「中露共同声明」に注目が集まっている。立命館大学教授の垂秀夫氏は、この声明が米国と西側諸国が主導する現在の国際秩序を「公正でも合理的でもない」とし、世界は既に多極化している以上、より多くの国が意思決定に参加できる秩序への組み替えを主張していると指摘する。要するに、冷戦後の米国中心の世界を自らに有利な形へつくり替えようとしているのだ。

変化する世界の力関係

実際、世界の力関係は大きく変わった。中国は世界第2位の経済大国となって久しく、いまや空母を保有し、宇宙や人工知能(AI)の分野でも米国を追う。ロシアも資源と核戦力を背景に、大国としての影響力を維持している。

中国ではAI、監視カメラ、ビッグデータが国内統治に活用されている。冷戦後に衰退するとみられた専制主義体制は新技術を取り込み、むしろ強靱になった。

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米国の相対的低下とトランプ氏の答え

一方、米国の力は相対的に低下している。2013年にオバマ大統領が「米国は世界の警察官ではない」と語ったことが、その象徴だった。バイデン政権も同じ現実を見ていたが、その処方箋は、米国一国で支え切れないからこそ、日本、欧州、豪州など同盟国・同志国の力を結集して国際秩序を守るというものだった。

トランプ氏が出した答えは全く異なる。国際秩序より米国の利益、同盟よりディール、ルールより力である。ここに大きな皮肉がある。中露が長年求めてきた「多極世界」の方向へ世界を動かしているのが、他ならぬ米国自身なのである。

日本に求められる戦略的自律

米国がルールより力を前面に出せば、中国が東シナ海や台湾海峡、南シナ海で軍事力を背景に現状変更を試みた際、何を根拠に北京を批判するのか。世界が再び「力こそ正義」の時代へ回帰しかねない今、日本にはこれまで以上の戦略的自律が必要となる。

それは米国から離れることではない。むしろ日米同盟を一層強靱にし、日本が米国にとって最も信頼できるパートナーになることである。そのためには憲法改正を含め、自国の安全を自ら守るための国内基盤を整え、力を高めなければならない。

日本自身の情勢認識と戦略を持ち、米国が専制主義国家の戦略に利用されないよう、同盟国として粘り強く働きかける必要がある。米国に追随するのでも距離を置くのでもない。米国の判断に影響を与えられる日本になる。それこそが戦略的自律である。

習主席訪米と日本の安全保障

9月下旬に訪米を予定する習近平国家主席が、トランプ氏にどのような世界観を語り、台湾問題をはじめ、中国側の論理をどう浸透させようとするのか。それは日本の国益と安全保障に直接関わる問題であり、高市早苗首相の外交の神髄が、まさに問われている。

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