戦後81年を経てもなお、先の大戦の戦没者の遺骨約112万柱が異郷の地に取り残されている。国のために戦い亡くなった日本軍将兵らの遺骨は、祖国、故郷への帰還を待ち望んでいる。遺骨の収集は日本国に課せられた重要な責務だ。高市早苗政権は収集を優先順位が高い政治課題としており、有言実行が期待される。
収容実績はわずか1%未満
厚生労働省によると、海外や沖縄、硫黄島などの戦没者約240万柱のうち、これまでに約128万柱を収容できた。残る遺骨のうち、海没した場合や北朝鮮など相手国の事情で困難な分を除く約59万柱を「収容可能見込み」に数えている。
平成28年には、遺骨収集を初めて法的に「国の責務」と位置づけた戦没者遺骨収集推進法が成立し、施行された。だが、その後の10年間で収容できたのは4千柱弱で、収容可能を見込んでいる遺骨の1%にも満たない。年月を経るにつれ、遺骨や遺留品が見つかりにくくなり、日本人の遺骨かどうかの鑑定にも時間がかかる。それでもあきらめてはならない。
台湾での試掘調査の意義
7月には、厚労省の委託を受けた日本戦没者遺骨収集推進協会が台湾南部の海岸で、およそ半世紀ぶりとなる遺骨収集に向けた試掘調査を行った。台湾の海岸には先の大戦末期、米軍に撃沈された日本の軍艦や輸送船の乗組員らの遺体が漂着し、地元の住民らが荼毘に付している。ところが、昭和47年の日中国交正常化に伴う台湾との外交関係断絶で、収集事業が滞っていた。
今回の試掘で遺骨は見つからなかったが、台湾側は引き続き協力する意向を示しており、調査を続けることが望まれる。台湾側の理解と協力により試掘調査が実現した意義は大きい。
困難な地域での収集へ尽力を
厚労省は、中国や北朝鮮、旧ソ連のウズベキスタンを「収集困難」地域と位置づけている。最大の約20万柱が取り残されているとみられる中国は、「国民感情」などを理由に日本側の収集を認めていない。ウクライナ侵略のため制裁を科しているロシアとの関係悪化で、ロシアでの収集も難しくなっている。ウズベキスタンは宗教上の理由で認めていないという。
これらの国々でも収集を実現すべく、政府は尽力してほしい。



