縄文時代の平和像を覆す発見
2022年、北海道伊達市の有珠モシリ遺跡から、縄文時代の常識を覆す人骨が発掘された。11体の人骨のうち8体に、鋭利な石器や鈍器で付けられたとみられる傷跡が確認されたのだ。歴史学者の武光誠氏は、これまで「平和で平等な時代」とされてきた縄文時代像が、この発見によって大きく書き換えられると指摘する。
有珠モシリ遺跡は面積約1万平方メートルの広大な遺跡で、1980年代から断続的に発掘が行われてきた。2018年から東北芸術工科大学などの研究グループが墓地の調査を進め、2020年に11体の人骨が同一地点から出土。その後の分析で、8体に戦闘によるものとみられる損傷が認められた。
富をめぐる争いの痕跡
武光氏は、縄文時代後期には地域によって富の格差が生まれ、それが武力衝突を引き起こした可能性を指摘する。有珠モシリ遺跡からは、身分を示すとされる勾玉や、葬送様式の違いも確認されており、社会階層の存在が浮かび上がっている。
「縄文時代の大部分は平等な社会だったと考えられるが、北海道の一部では富をめぐる争いが発生していた」と武光氏は述べる。出土した人骨の傷は、石鏃や棍棒のような武器でつけられたと推定され、集団間の戦闘があったことを示唆する。
身分差を示す埋葬の違い
同じ遺跡からは、身分によって異なる様式で葬られた人骨も見つかっている。高い身分の人間は丁寧に葬られ、低い身分の者は簡素な埋葬だった可能性がある。武光氏は「女系の氏族が集落を開いたケースもあり、政治を握る有力者が存在した」と解説する。
この発見は、縄文時代が単純な平等社会ではなく、地域によっては階層化と紛争が存在したことを示している。武光氏の著書『直近20年の新発見で解き明かす 古代史の真実』(青春出版社)では、こうした新知見を詳しく紹介している。
縄文人の実像は、これまで考えられていたよりも複雑で多様だった。今後の研究でさらに詳細が明らかになることが期待される。



