法の支配を掲げながら、同盟国である米国にどこまで物を言えるのか。日本外交はニューヨークで、その難題に直面した。
22日の国連総会で、トランプ米大統領は国際刑事裁判所(ICC)を「邪悪な集団」と呼び、すべての加盟国に脱退を求めた。その約9時間後、高市早苗首相は演説で、ICCなどの国際裁判所を「一貫して支持してきた」と表明した。日米の首脳が全く逆の評価を示したことになる。
首相は米国による制裁に触れず
一方、首相は米国による赤根智子ICC所長らへの制裁には触れなかった。これに先立つ日米首脳会談では、ICCについて日本側から切り出した。政府は「我が国の立場を踏まえて、率直なやりとりを行った」とするが、首相が制裁撤回を求めたかは明らかにしていない。
首脳会談では議題にし、国連演説では制裁に触れない。そこには、日米同盟への配慮が表れている。
直後には米中首脳会談が控えていた。日本は、中国をめぐる懸念を伝え、台湾問題などで米国が過度に譲歩しないよう、トランプ氏に働きかけたいという事情があった。ICCをめぐる立場の違いを際立たせたくなかったと思われる。
「日本の対応は弱い」との声も
赤根氏への制裁後、政府関係者に「日本の対応は弱いのではないか」と尋ねた。「トランプ氏の怒りをかったら何が起きるかわからない。そのリスクを考えているのか」。いらだちがにじんでいた。ICCに長く関与した外交関係者も「度胸試しではないのだから、強く言えば良いというものではない」と言う。
たしかに、外交では、相手を動かせるかを考えるのは当然だ。ただ、相手が変わらないから言わないのなら、力の強い相手ほど、日本は何も言わないことになる。
中国やロシアに抗議しても、すぐに行動が変わるわけではない。それでも言うのは、何を認め、何を認めないのかという日本の立場を示す意味があるからだ。相手が米国なら、その理屈は変わるのか。
今回だけなら、やり過ごすことも外交かもしれない。だが、それを重ねれば、「日本は米国には何も言わない」という認識が定着しかねない。
大国の行動の正統性を問い続ける力
戦後の日本には、東京裁判で…