フランス軍司令官が事前通知を認める
中国が南太平洋に向けて実施した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射について、フランスは事前に発射が迫っているとの通知を受け、同盟国やパートナー国と連携して動向を監視していた。フランス軍太平洋軍司令官のギヨーム・パンジェ海軍少将が7月10日、東京都内のフランス大使館で筆者の単独インタビューに応じ、明らかにした。
同司令官は今回の発射を「核抑止力の信頼性を示すもの」と評価した。一方、フランス海軍唯一の原子力空母「シャルル・ド・ゴール」の将来的な日本寄港については、フランスの核抑止政策と日本の非核三原則という、安全保障政策の根幹に関わる課題が浮かび上がった。
フランスは「太平洋の当事国」
中国は7月6日、原子力潜水艦から南太平洋へ向けSLBMを発射した。中国側は模擬弾頭を使用した通常の訓練だとしている。しかし、ニューカレドニアや仏領ポリネシアなどに海外領土を持つフランスにとって、今回の発射は遠い地域の出来事ではない。
同司令官はこう強調した。「フランスは領土と国民を持つ太平洋の主権国家だ。したがって、地域の国民、領土、利益を守ることに全面的に関与している」
フランスはインド太平洋に恒久的な軍事プレゼンスを維持する唯一の欧州国であり、中国海軍や中国海警局、中国の核戦力について独自に情報を収集・分析しているという。
「われわれは同盟国やパートナー国と連携しながら、こうした活動を非常に注意深く監視している」
そのうえで同司令官は、「フランスは今回の発射が差し迫っているとの事前通知を受けていた」と述べ、発射前から状況を把握していたことを明らかにした。同司令官は、核保有国としての視点から次のように説明した。
「核保有国として、われわれはこの種の試験を、核抑止力の信頼性を示す手段と見ている」
ラロトンガ条約への評価は避ける
パンジェ司令官は、南太平洋非核地帯条約(ラロトンガ条約)についての評価を求められると、直接の回答を避けた。同条約は南太平洋での核兵器の開発、実験、貯蔵を禁止しているが、中国のSLBM発射は条約の精神に反するとの見方もある。
「フランスは核保有国として、核抑止力の維持に責任を持つ。条約の解釈は各国に委ねられている」と述べるにとどめた。
台湾海峡通航は「通常の活動」
同司令官は、フランス艦艇の台湾海峡通航について「通常の活動の一部」と説明。台湾海峡は国際水域であり、航行の自由は国際法で認められていると強調した。中国が台湾海峡での軍事活動を拡大する中、フランスは同盟国と協調して航行の自由を維持する姿勢を明確にした。
日本寄港を難しくする核搭載の曖昧さ
原子力空母「シャルル・ド・ゴール」の日本寄港の可能性について、パンジェ司令官は「現時点で具体的な計画はない」としつつ、将来的な寄港の可能性を排除しなかった。しかし、フランスの核抑止政策に基づき、同空母は核兵器を搭載している可能性がある。日本の非核三原則は「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」としており、核搭載艦艇の寄港は認められていない。
同司令官は「フランスは核搭載の有無を公表しない政策を取っている。そのため、寄港の際には日本側との調整が必要になる」と述べ、課題を認めた。
日仏協力は新たな展開へ
日仏間では防衛協力が進展しており、2024年には日仏共同訓練が実施された。パンジェ司令官は「日本はインド太平洋地域の重要なパートナーだ。今後も共同訓練や情報共有を強化していきたい」と語った。
一方、中国の南太平洋での活動拡大に対し、フランスは独自の監視能力を活用し、同盟国との連携を深める方針だ。同司令官は「フランスは太平洋の主権国家として、地域の安定に責任を持つ。中国の活動が地域の安全保障に与える影響を引き続き注視する」と述べた。



