東京23区で即日開票回帰の動き、中野区は約30年ぶりに変更
東京23区で即日開票回帰の動き、中野区は約30年ぶり

来春の統一地方選に向け、東京23区で開票日を従来の「投票日の翌日」から「当日(即日)」に戻そうとする動きが広がっている。バブル崩壊を機に、23区では人件費を削ろうと開票作業を平日の日中へ移した経緯があり、情報技術の発展や労働環境の変化といった近年の社会情勢に沿った見直しが進む。

中野区は約30年ぶりに即日開票へ

東京都中野区は今年6月の区長選を即日開票に戻した。区議会で「SNSやネットが発達し、選挙も情報の鮮度が重要だ」という声が相次いだためで、2002年以来の変更となった。

職員約300人が携わった開票作業は大きな混乱もなく、区の想定通り約2時間半後の午後11時半頃に終わった。区選挙管理委員会は「結果を速やかに伝えられる利点は大きい」とし、来春の区議選も即日開票にする方向で検討している。

翌日開票の経緯と見直しの背景

国の調査によると、1955年の統一選では、人口が多く開票に時間がかかる都市部を中心に、全自治体のおよそ3割が翌日開票を採用していた。だが、2015年以降は中野区など東京の6区だけが続けていた。統一選期間以外の地方選でも、離島から投票箱を運ぶ必要がある鹿児島県や沖縄県などの一部にとどまる。

公職選挙法は選挙結果を「速やかに知らせるように努めなければならない」と定め、国政選で即日開票が定着したことも移行を後押ししたためだ。1995年の統一選では全自治体が当日の開票で足並みをそろえたものの、99年には都内10区が翌日に回帰した。

各区によると、不況期の税収減を受けた歳出削減策の名残なのだという。中野区では日曜夜の投票締め切り後に開票を始めると、終電を逃して朝まで残る職員らの手当などに300万円ほどかかっていた。業務時間中に開票すれば、不要になるというわけだ。

ただ、近年は区の財政も安定し、投票用紙の自動分類機などの導入で作業の高速化が進んだ。「開票所となる体育館を区民に早く開放できる」(区選管の永田純一事務局長)という副産物もあり、手当の削減効果を上回ると判断した。

江戸川区や葛飾区でも導入、電子投票への期待

中野区のほか、江戸川区が次回選で即日に戻すことをすでに決め、江東区でも見直しの動きがある。江戸川区が理由に挙げるのが、この20年で1割減った職員の「働き方改革」だ。投開票の時期は窓口が混み合う年度初めに重なる。平日の開票作業には区職員の1割近い約400人が駆り出され、「業務が滞り、残業が増える」と不評だった。区選管の流英一事務局長は「本来業務へのしわ寄せという『見えないコスト』を考慮した」と語る。

日曜の開票作業に従事した職員は、時期を分けて休めるよう配慮するという。開票作業も最新の機器を導入することで、さらに1時間の時短を見込んでいる。

6区とは別に葛飾区も昨年、人件費の高騰を受けて即日へ戻している。開票作業で頼る人材派遣会社への支払額が増え、約500万円だった職員の手当と比べて「節減効果が乏しくなった」(区幹部)ためという。

電子投票の普及と課題

開票作業は技術の進歩に支えられている。選挙機器メーカーのムサシ(東京)が自治体の半数以上に納入する機器は、毎分660票を候補別に自動で振り分ける。速さは手作業の30倍超という。

ただ、開票中のトラブルは尽きない。2013年の参院選では、人の手で票を1枚ずつ再点検し、確定まで15時間かかった例があった。手書きで人名が判別しづらい票の有効性が争われる訴訟も各地で相次ぐ。

解決の切り札となるのが電子投票だ。端末の画面上で候補の名をタッチする仕組みで、8月の福岡県粕屋町長選では開票がわずか25分で終わった。読売新聞の調査では、少なくとも全国の19市町村が導入済みか、導入を予定している。

地方選挙に詳しい拓殖大の河村和徳教授(政治学)は「ネットの普及で選挙結果の速報性がいっそう求められる」とした上で、「自治体の職員が減る中で開票作業の効率化は欠かせず、電子投票の普及を急ぐべきだ」と指摘する。

一方、端末は一度に表示できる人数が限られるのが弱点で、前回選に約60人が区議選に立候補した東京都江東区は「届け出順で不公平が生じる恐れがある」と導入に慎重な姿勢を示す。