成田空港機能強化で移転の芝山町、郷土かるた完成 歴史継承へ
成田空港機能強化で移転の芝山町、郷土かるた完成

成田空港の滑走路新設・延伸など「機能強化」に伴い、千葉県芝山町では4地区(加茂、中郷、中谷津、菱田東)の住民が移転対象となった。失われゆく郷土の歴史を後世に伝えるため、町民らが「芝山町郷土かるた」を製作し、7月末に完成した。

発案者の石毛博道さん(77)は「町の歴史を徹底的に書いた。子供だけでなく大人も楽しめる内容。ぜひ手にとってほしい」と話している。

町民有志が製作、学校での活用も期待

芝山町立芝山古墳・はにわ博物館で、町民らでつくる有志団体「しばやま郷土史研究会」のメンバーに、完成したかるたがお披露目された。写真があり、解説も詳しく書かれているため、学校での地域学習に役立ててほしいという。

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かるたの製作は、研究会のメンバーで中郷地区に住む石毛さんが発案した。かつて空港建設に抵抗する反対同盟熱田派事務局長を務めたが、現在は推進派としてC滑走路新設の実現に尽力している。

町は総面積の7分の1にあたる約650ヘクタールが空港の新たな敷地になる。4地区では移転が本格化し、対象は計約130戸に上る。

2回目の移転、離れる住民への思い

石毛さんはかつて、自宅がB滑走路の騒音に伴う移転対象となった。今回は2回目の移転で、町内の集団移転地に移る。13戸あった中郷地区では半数ほどの世帯が町外に移転し、他の地区でも近隣の自治体を希望する人が多いという。

石毛さんは「それぞれの事情があるから仕方ないが、町を離れていく人は想像していたよりも多い」と語る。

住民がバラバラになる中、郷土史の継承を危惧した石毛さんが思いついたのがかるたの製作だった。母親の出身地・群馬県は「上毛かるた」で知られ、同県の名所旧跡や歴史、人物などが題材で、学校や地域での大会も盛んに開かれていることから「日本一の郷土かるた」とも言われている。

上毛かるたに倣い44枚、空港関連の札も

石毛さんは「群馬で生まれ育った県民なら、上毛かるたの読み札を誰でも記憶している。芝山町でも同じように郷土かるたを作りたかった」と話す。

「芝山町郷土かるた」も上毛かるたと同じ44枚。町外に出て行く住民が増えてきた約3年前に石毛さんが原案を考え、研究会のメンバーで話し合って決めた。町内全域の歴史や建物などを題材にしており、4地区や空港に関する札も多い。

「中谷津は 明治の開墾 空港に」の札では、明治時代中期に埼玉県から移住した数人の農民らが開墾したことで始まった中谷津地区が、今回の機能強化で空港の敷地となって失われていくことをうたった。

開港を巡って国と住民が対立して死傷者が出た「成田闘争」を題材にした読み札もある。「警備とは キケンな仕事 殉職碑」。開港前年の1977年、当時柏署の巡査部長だった男性が、芝山町長宅の警備中に、反対派の火炎瓶による襲撃を受けて亡くなった。町内には巡査部長の名前が刻まれた碑が残されていることをかるたにした。

解説文で闘争の記憶を伝える

かるたには石毛さんらが考えた解説文がつけられている。闘争で警察側と反対派の双方に死傷者が出たことを紹介し、「開港から50年近くがたち、闘争は遠い過去になりつつあるが、尊い人命が失われたことは、記憶にとどめていてほしい」と記されている。

石毛さんは「俺らの世代までは知っていても、1世代下になると知らない町民も多い。殉職碑があっても町民に振り向かれなくなっては意味がない」と語る。

300部を製作、小中学校や公民館に配布

かるた製作は昨年度、町教育委員会の事業に採択され、300部が作られた。町内の小中学校や公民館に配布し、かるた大会も行う予定だ。

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町教委の担当者は「子供たちや大人に遊んでもらって郷土愛を持ってもらい、郷土意識の醸成につなげてもらいたい」と話している。