米国のマルコ・ルビオ国務長官は、NATO(北大西洋条約機構)加盟国に対し、国防費の国内総生産(GDP)比を5%に引き上げる新たな目標を提案した。現在の目標である2%でさえ多くの加盟国が達成できていない中、この大幅な引き上げ案には欧州側から強い反発が上がっている。
ルビオ長官の提案内容
ルビオ長官は12月14日、NATO本部で開かれた外相会合で「加盟国は国防費をGDP比5%に増やすべきだ」と述べた。同長官は「米国はNATOの防衛に多大な貢献をしてきたが、欧州諸国はもっと負担を分担すべきだ」と強調。トランプ次期政権の方針を反映したものとみられる。
現在のNATOの国防費目標はGDP比2%で、2014年のウェールズ首脳会合で合意された。しかし、2024年のNATO推計によると、32加盟国のうち目標を達成しているのは23カ国にとどまる。ドイツやフランスなど主要国も未達成であり、欧州全体の平均は約2.7%とされる。
欧州側の反応
欧州各国の外相はルビオ氏の提案に難色を示した。ドイツのアンナレーナ・ベアボック外相は「2%目標でさえ多くの国にとって困難な課題だ。5%は非現実的だ」と批判。フランスのジャン=ノエル・バロー外相も「国防費増額は必要だが、財政規律とのバランスが重要だ」と慎重な姿勢を示した。
一方、バルト三国などロシアと国境を接する国々は、国防費増額に前向きな姿勢を見せている。エストニアのマルグス・ツァフクナ外相は「安全保障環境を考慮すれば、さらなる負担増はやむを得ない」と述べた。
トランプ次期政権との連携
ルビオ長官の提案は、トランプ次期大統領がNATOに対してより厳しい姿勢を取る意向を示していることと連動している。トランプ氏は前政権時代、NATO加盟国に国防費のGDP比2%達成を迫り、未達成国に対しては「米国が防衛を保証しない」と警告していた。
今回の5%目標提案は、トランプ氏が選挙戦で掲げた「米国第一主義」の外交政策を具体化するものだ。米国は現在、NATO全体の防衛費の約70%を負担しており、ルビオ長官は「不公平な負担を是正する必要がある」と主張している。
今後の見通し
NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、国防費の増額自体は重要だと認めつつも「加盟国間の合意形成には時間がかかる」と述べ、5%目標の早期実現は困難との見方を示した。NATOは2025年6月の首脳会合で新たな国防費目標を議論する予定だが、今回の提案をめぐって激しい駆け引きが予想される。
専門家の間では、5%目標は多くの国にとって財政的に不可能に近いとの指摘もある。欧州諸国の国防費は過去10年で増加傾向にあるが、GDP比5%となると、現在の約2倍の支出が必要となり、他の公共支出を大幅に削減せざるを得ない。



