ウラン濃縮をめぐる懸念
米国とサウジアラビアの原子力協定が成立した。この協定は、軍事転用が可能なウラン濃縮活動に道を開く恐れがあるとの指摘があり、核拡散への疑念が拭えない。
協定の詳細は公表されていない。米国が原子力発電所の導入に必要な技術をサウジに提供するほか、米企業がサウジ国内にウラン濃縮施設を建設する検討も進むという。
UAE協定との違い
ウラン濃縮は核兵器の開発につながり得る。米国が2009年にアラブ首長国連邦(UAE)と結んだ原子力協定では、UAEが濃縮を自国で行わないことが定められた。ところがサウジとの協定には同様の条項がないとされ、核兵器開発の余地を残している。
原子力の平和利用は各国の権利だが、核拡散防止条約(NPT)への加盟と国際原子力機関(IAEA)の査察を受けることが前提となる。核保有を認められた米露中英仏以外でウラン濃縮を行う国は、通常の査察に加え抜き打ち査察を受け入れており、日本やドイツ、オランダなどが透明性の確保に努めてきた。
米国は自らが関与すれば軍事転用を防げると主張するが、例外扱いは許されない。IAEAとの全面協力が不可欠である。
中東の核情勢
サウジが高度な原子力能力の獲得を目指す背景には、石油依存型経済からの脱却に加え、イランとの覇権争いがあるとみられる。サウジのムハンマド皇太子は「イランが核爆弾を開発すれば、我々も後を追う」と述べ、核保有の意思を示唆したこともある。
イランは長年秘密裏に核開発を続け、ウラン濃縮を拡大させてきた。国際社会の疑念を招き、米国とイスラエルは武力攻撃に踏み切ったが、イランが保有するウランの処理といった問題は解決していない。この状況でサウジが透明性を欠く原子力利用を進めれば、中東の核を巡る緊張は一層高まる。
アブラハム合意と今後の課題
トランプ米大統領は、協定への批判を踏まえ、イスラエルとアラブ・イスラム諸国の国交正常化の枠組み「アブラハム合意」にサウジが参加することを協定発効の条件とする考えを示した。
核拡散の防止は世界の安全に不可欠だ。2国間の協定であっても、国際的なルールを尊重して慎重に対応すべきである。



