ウクライナ戦場の前線の両側に、中国製品が存在する。ロシアでは中国製の工作機械がミサイルや戦車の部品を削り出し、ウクライナでは中国製の部品で組み立てられた小型ドローンが偵察や攻撃に使われている。これは第二次大戦以来、欧州最大の戦争に対する中国の静かな戦略であり、国際基督教大学(ICU)のスティーブン・R・ナギ教授(政治学・国際関係学)は習近平国家主席を現代の「死の商人」と呼ぶ。
ロシアへの供給:工作機械とデュアルユース品
2022年のロシアによるウクライナ侵攻後、欧米と日本は制裁でロシアへの先端部品輸出を停止した。しかし中国は隙間を埋め、完成兵器こそ供与しないものの、ロシアが自国で兵器を生産するための工作機械(CNCマシン)や半導体、光学センサー、ドローンモーター、ベアリング、ニトロセルロース(火薬原料)などを大量に供給している。これらは民生品にも使える「デュアルユース」品であり、中国は「工業製品の輸出」と主張できる。
中ロ貿易は過去最高水準に達し、年間約2400億ドル。中国はロシアから安価な石油・ガスを輸入し、ロシア経済と兵器生産を支えている。
ウクライナへの部品供給
一方、ウクライナ軍が使用する小型ドローンの多くは、中国・深圳などの工場で製造された部品で構成されている。これにより中国は戦争の両側から利益を得ている。
台湾有事における日本のリスク
ナギ教授は、中国が同じ戦略を日本に対しても用いる可能性があると警告する。台湾有事の際、中国は直接的な軍事的関与を避けつつ、日本に必要な部品や工作機械の供給を制限したり、逆に紛争当事者に供給することで日本を間接的に圧迫する可能性がある。
日本とその友好国は、こうした中国の「死の商人」戦略を認識し、自国の生産基盤とサプライチェーンを強化する必要がある。



