政治・経済・投資の世界に衝撃が走った。アメリカとイランが14項目の覚書に署名し、国際秩序が大きく動き始めた。戦争は終結に向かい、サプライチェーンは回復できるのか。丸紅経済研究所の今村卓社長に話を聞いた。
14項目の覚書は何を物語っているか
パキスタンおよびカタールの仲介により、アメリカとイランは6月17日、14項目に及ぶ覚書に署名した。戦争は実際に終結に向かうとともに、ホルムズ海峡の封鎖が解除され、サプライチェーンは正常化するのか。アメリカおよび中東情勢に詳しい、丸紅経済研究所の今村卓社長に聞いた。
──アメリカ、イランの歩み寄りの背景に何があったのでしょうか。
アメリカは、イスラエルの誘いに乗ってイランに先制攻撃を仕掛けた。最高指導者のハメネイ師をはじめイランの要人の多くを殺害し、軍事施設に大規模な空爆を実施した。しかし革命防衛隊を中心としたイランの現体制は揺るがず、むしろ強化することに手を貸してしまった。
他方、世界のエネルギー輸送のチョークポイントであるホルムズ海峡の封鎖は、アメリカ経済にもダメージを与えた。アメリカにとって原油の中東依存度はごくわずかであるものの、世界規模での市場価格高騰の影響は免れず、ガソリンをはじめとしてインフレーションの圧力にさらされている。トランプ政権の支持率は大きく下がり、今年11月に予定されている上下院の中間選挙でも与党共和党は敗北の可能性が高くなっている。
原油価格は当面1バレル80ドル台か
今村社長は、覚書の署名を受けて原油価格は安定し、当面は1バレル80ドル台で推移する可能性があると指摘する。しかし、完全な正常化には時間がかかる見通しだ。
「ホルムズ海峡の封鎖が解除されれば、サプライチェーンは徐々に回復するでしょう。しかし、イランへの経済制裁の一部は残るため、原油の供給量が急増するわけではありません。市場は様子見の状態が続くと考えられます」
また、今村社長は、アメリカ国内のインフレ圧力が緩和されるかどうかが、今後の焦点になると述べた。
「ガソリン価格の高騰はトランプ政権にとって痛手でした。中間選挙を控え、政権は何とかして物価を安定させたいところです。覚書の効果がいつ現れるかが鍵を握ります」



