米国で夏時間(サマータイム)の通年化の是非をめぐる議論が熱を帯びている。夕刻の客足に期待する小売業や、トランプ大統領の一族が経営に関わるゴルフをはじめとするレジャー業界などの推進派と、子供の通学などへの影響を懸念する慎重派との隔たりが埋まるかが課題となる。通年化の法案は連邦議会下院で可決され、上院で審議される見通しだ。
トランプ氏がSNSで支持表明
米国では夏の長い日照時間を有効活用するため、ハワイ州などを除き3月第2日曜日に時間を1時間進めてサマータイムに切り替え、11月第1日曜日に標準時間に戻す。下院で7月に可決した法案は、年2回の時間変更をなくし、一年中サマータイムとする内容だ。
トランプ氏は今月4日、「人々は年に2回も時計の針を直さなければならないことにうんざりしている。愚かで不便だ」とSNSに投稿し、サマータイムの通年化に意欲を燃やした。
経済効果への期待と懸念
冬季もサマータイムになれば、夕刻の明るい時間帯が延び、買い物や屋外レジャーの客足が伸びると期待されている。観光業が盛んな南部フロリダ州選出の下院議員らが通年化を推進しており、全米ゴルフ場経営者協会は、仕事後のラウンドが増えることで、年間約10億ドル(約1600億円)の追加収入を見込む。
現行制度では、時間の切り替え直後に体内時計が狂い、睡眠不足などが生じることで、交通事故や心血管系の病気が増えるとされる。スタンフォード大のジェイミー・ザイツァー教授(睡眠医学)は「標準時間の通年化が健康に最も良いが、サマータイムを通年化しても脳卒中や肥満のリスクは大幅に下がる」と語る。
慎重派の反対論
一方、冬季の日の出時刻が遅くなることの弊害を指摘する声もある。地域によっては午前9時を過ぎても日が昇らず、児童が暗い中で登校する必要があり、全米各地のPTAを束ねる非営利団体「全米保護者・教員協会」は「安全のため冬季のサマータイム導入に反対する」と懸念を示す。
集荷や市場などの決められた時間に合わせる必要がある農業などの屋外作業にも影響するとの指摘もある。法案の次の審議の場となる上院では、冬の日照時間がより短い北部の州の議員らから反対論が出ており、共和党上院トップのジョン・スーン院内総務(サウスダコタ州)らが慎重な姿勢を示している。
過去の経緯と日本の事例
米国は石油危機に直面した1970年代、夜間の電気使用減などエネルギー節約につながるとしてサマータイムを一時的に通年化した。ただ、冬季の暗い早朝の交通事故などを懸念する国民の反発を受け、早々と廃止に追い込まれた経緯がある。日本でも2021年の東京五輪・パラリンピック開催に合わせ、サマータイム導入が検討されたが、システム改修やそれに伴う障害、健康への懸念などから見送られた。



