6月半ばにフランスで開催された先進7カ国首脳会議(G7エビアン・サミット)で、イギリス、フランス、ドイツなどがウクライナと組んで、ある「作戦」を仕掛けた。その計画は裏目に出る可能性もあったが、結果的に奏功した。その作戦とは何だったのか――。
作戦の舞台となったのは、ゼレンスキー大統領も参加してウクライナ、中東など地域情勢について討議したサミット2日目の会合。アメリカの報道によると、サミットのホストであるフランスのマクロン大統領が会合前夜に提案した作戦の概要は、こうだ。
トランプにウクライナへの武器支援拡大を認めさせられるか
会合でイギリス、フランス、ドイツ、イタリアの欧州首脳らとゼレンスキーが、アメリカのトランプ大統領に対し、侵攻では現在ウクライナが勝っており、ロシアが負けていると、強調する。そのうえで、トランプ大統領に対し、キーウへの武器支援拡大の必要性を訴えるというものだった。
この作戦にはリスクがあった。これまでロシアのプーチン大統領寄りの仲介をしていたトランプが、こうしたウクライナ支援強化論に反発して、欧州側と対立するなど、逆効果になる可能性があったからだ。
しかし、結果的にこの賭けはうまくいった。トランプも含め、G7首脳は共同声明でウクライナに対する防空システムや長距離攻撃用兵器の供給で合意。さらにゼレンスキーが強く求めているアメリカの主力防空システム「パトリオット」のウクライナ国内でのライセンス生産認可を検討することも表明したのだ。同時にロシアへの経済制裁を強化し、石油・ガス部門もこれに含めることを、G7の共同声明は打ち出した。
もちろん、考えがくるくる変わるトランプのこと、今後再びロシア寄りに立場を変える可能性は残る。それでもウクライナ支援強化が、トランプも同意した共同声明に明記された意味は大きい。
トランプも認めざるをえないウクライナ軍の躍進
では、トランプは今回、なぜ、ウクライナへの軍事支援拡大を支持したのか。その最大の要因は、キーウの軍事専門家たちも驚くようなスピードで急拡大するウクライナ軍の攻勢だと筆者は考える。
ウクライナ軍は最近、南部戦線でロシア軍の防衛線を突破し、重要な補給拠点を奪還するなど、目覚ましい戦果を挙げている。また、クリミア半島への上陸作戦を年内に開始する可能性も取り沙汰されており、ロシア側はクリミアとロシア本土を結ぶケルチ橋の防衛を強化せざるを得なくなっている。
こうしたウクライナの攻勢は、モスクワ市民の間に戦争が首都に及ぶのではないかという不安を広げている。ロシア国内では、ウクライナ軍のドローン攻撃がモスクワ近郊にまで達する事例が報告され、プーチン政権は戦争の現実を国民から隠しきれなくなっている。
日本政府の優柔不断な動きをロシアは突くのか
一方、日本政府の対応は依然として優柔不断だ。G7サミットではウクライナ支援強化で一致したものの、日本国内ではエネルギー安全保障やロシアとの関係悪化を懸念する声が強く、具体的な支援策の拡大には踏み切れていない。ロシアはこうした日本の隙を突く可能性があり、北方領土問題やエネルギー協力を盾に日本を牽制する動きが強まるかもしれない。
ウクライナとロシアの攻防は、G7サミットを機に新たな局面を迎えた。ウクライナの賭けは成功したが、今後のトランプの動向やロシアの反応次第で、状況は大きく変わり得る。引き続き注視が必要だ。



